黒尽くめの女性仕事人は炎上企業の危機を救う=神護かずみ「ノワールをまとう女」

現代社会につきものともいえるアジテーターによる企業の炎上騒動を裏から鎮火するプロの女性仕事人の活躍を描く、裏ビジネス・ミステリーが本書『神護かずみ「ノワールをまとう女」(講談社文庫)』です。

本書は令和元年の第65回江戸川乱歩賞の受賞作で、新たなダーク・ヒロイン登場と評判になった作品です。

【スポンサードリンク】

あらすじと注目ポイント

本巻の主人公・西澤奈美は、三十代半ばの、いつも黒尽くめの服(ノワール)を着こなし、筋力トレーニングを日課として見事なプロポーションと筋肉を維持し、好きな音楽はオールディーズ、ビールと栄養ゼリーを冷蔵庫に常備し、恋人はユキエというITに詳しい美女という女性です。

彼女は、児童養護施設を出てから、大手のパン工場に就職したのですが、そこで上司からセクハラを受け、体のいい愛人扱いをされていたのですが、ついにブチ切れて、その男を拘束して工場長の前に突き出して告発し、男の人生を駄目にして復讐した上に、多額の賠償金を会社から獲ちとっています。その行動の見事さが、総会屋出身で企業の裏社会を仕切る「原田哲」の目に留まり、愛弟子として教育され、現在では腕利きの「炎上の消火人」となっています。

今回請け負ったのは、「美国堂」という化粧品、薬品製造・販売を展開知る大手お薬品会社の炎上事件です。日本国内有数の優良メーカーなのですが、韓国のトイレタリーメーカーの子会社化に際して役員となった、その会社の元社長が反日発言を行っていたことが明らかになり、嫌韓団体から目をつけられて、ネガティブ・キャンペーンと不買運動を展開されていて、東京本社・大坂本社が定期的にデモを仕掛けられている、というものですね。

この騒動を収めるために、美国堂と顧問契約をしている原田から、奈美は炎上の沈静化を依頼されます。
実は、美国堂は三年前にも同じような炎上騒動に巻き込まれていて、その際に騒動を沈静化させたのが、この「西澤奈美」で、その時には、アジテーションの中心人物・木部に健康保険証詐欺を仕掛け、その事実をネットで広げることで運動を萎ませています。西澤に仕掛けられた木部は裁判で執行猶予付きのハンケ油がでた翌日に睡眠薬自殺をしています。

今回の運動が、「木部」の仇討ちの色合いもあると見た奈美は、名前と住居を偽ってそのグループに潜入するのですが、そこでグループの有力メンバーとして現れたのが、「ナミ」というハンドルネームを名乗る、奈美の恋人「雪江」で・・という筋立てです。

雪江の目的がつかめないまま、奈美はグループの活動の妨害を始めます。

まず最初の標的は「ハオウ」というグループのナンバー2で、彼がリーダーの「エルチェ」に対抗意識を燃やしているのを利用して、大坂支社前でのデモの前に、高速道路の料金所のETCレーンを強行突破したことをネットであげて、グループの犯罪性をアピールします。

そして、グループの信頼度を落としたところで「エルチェ」の正体をさぐるのですが、彼は奈美が贔屓にしていた新宿区大久保にある韓国料理店の自殺した女ん¥主人の息子であることがわかってきます。そして、女主人の自殺の遠因に彼がいることも。

そして、ここで「ナミ」を名乗っている奈美の恋人「雪江」が「リーダー「エルチェ」に、美国堂の株主総会で、会社の信用を徹底的に失墜させる「爆弾」を渡したという情報を得るのですが、その後、雪江が青酸カリで自殺しているのが発見され・・という展開です。

「エルチェ」のグループが手にした爆弾は、美国堂の社長が反日韓国女優とホテルへ入っていく映像で、彼らはこれを株主総会の会場とYoutubeに同時配信して、会社の信用を落とすことを企んでいます。奈美は雪江の自殺のショックをこらえながら、この計画の阻止を図るのですが、その方法は・・という展開です。

この後、雪江の自殺の真相と彼女の正体や、奈美と裏稼業の師匠「原田」との対決が待ち構えているので、嫌韓グループの犯行阻止のところで安心せずに、ノンストップで巻の最後まで引っ張られていくこと間違いなしです。

レビュアーの一言

なんといっても、本書はヘイト活動による企業活動の妨害、LGBTQ、児童虐待とその後、在日問題と盛りだくさんなネタのミステリーとなっています。
ここまで盛り込むと主人公がワケアリが過ぎて重くなってしまうのですが、本編の「西澤奈美」はハードボイルドな性質のせいか、軽快かつタフにタスクに挑んでいくのが魅力的です。
最近は、楯岡絵麻のような行動心理学に通じたインテリ・ハードボイルドな女性主人公が多いのですが、奈美のようなタフな女性主人公もよいですね。

【スポンサードリンク】

コミックシーモアのおすすめポイントをまとめてみた
新型コロナウィルスの感染拡大以来、マンガを読む手段としてすっかり「王道」のポジションを獲得した「電子コミック」サービス。2021年のHon.jpのデータによると、電子コミックの総販売高は4114億円で、コミック市場の占有率は60.9%になっ

コメント

タイトルとURLをコピーしました