玉砕とゲリラ戦で日本・アメリカ両軍に大損害を出した「ペリリューの戦い」とは?=武田一義「ペリリュー」1〜4

大東亜戦争中の1994年9月15日から11月27日のおよそ2ヶ月間に渡って、現在のパラオ共和国のに属するペリリュー島で、日本軍守備隊一万の兵士とアメリカ軍上陸部隊四万の兵士との間で繰り広げられた、太平洋戦争屈指の戦闘といわれた「硫黄島の戦い」へと続いていく南洋諸島戦線での代表的な戦闘を、日本軍に従軍していた作者の祖父からの聞き語りをもとに描かれる『武田一義「ペリリュー」(白泉社)』シリーズの第1弾から第4弾。

当時、南洋一といわれ、アメリカ軍のフィリピン奪還のための拠点となる飛行場を巡って、日本軍とアメリカ軍が互いに奪取を繰り広げるとともに、島内につくられた洞窟に日本軍が立てこもり、アメリカ軍の占領後もゲリラ戦を繰り広げた戦闘が、司令官などの戦闘の指揮官の立場からではなく、一従軍兵士の目から描かれた戦記の始まりです。

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あらすじと注目ポイント

第1巻 南海の楽園「ペリリュー」に駐屯する日本軍へアメリカ軍の大攻撃始まる

第1巻の構成は

第1話 ペリリューの島 昭和19年
第2話 楽園
第3話 戦場
第4話 戦いの朝
第5話 声
第6話 虹の下
第7話 落日

となっていて、シリーズの主人公で、漫画家志望の日本軍の一等兵・田丸がサンゴ礁が大昔に隆起してできあがった島のため、カチンコチンに固い地面を掘って洞窟づくりをしている場面から始まります。

時期的には昭和19年夏、冒頭ではアメリカ軍爆撃機による爆撃がくり広げられているので、マリアナ海戦での日本軍の大敗によって周辺海域の制海権・制空権を失うあたりです。この頃、7月にサイパン島、8月にテニアン島、グアム島で日本軍が玉砕しているのですが、その勢いをかってペリリュー島への猛攻撃を開始し始めています。

当初、アメリカ軍はペリリュー島侵攻が2〜3日で済むという楽観的な素押しを立てていたのですが、ここから日本軍の頑強な抵抗にあい、長い戦闘が開始します。

ここで迎え撃つ日本軍が盤石であったかというとそうでもなくて、爆撃機による無差別爆撃で今まで横で喋っていた兵士が吹き飛ばされたり、アメリカ軍の艦砲射撃から避難した壕の入り口にいた兵士たちが爆死したり、と圧倒的な火力の前にじりじりと洞窟内へと追い詰められていきます。

今巻では主人公・田丸が「功績係」に任じられ、遺族へ届ける戦死者の功績をまとめる仕事を命じられます。「功績」とはいっても「名誉の戦死」ばかりではなく、内容は・・といった展開です。

第2巻 ペリリューの奪還を目指して日本の残留兵は奮闘するが・・

第2巻の構成は

第8話 遭遇
第9話 合流と漂流
第10話 命の水
第11話 捨て石たち
第12話 守るものたち
第13話 空
第14話 持久に徹す
第15話 開戦36日目

となっていて、アメリカ軍がペリリュー島に上陸して3日目となっています。西浜の戦闘で田丸たちの部隊は蹴散らされ、ちりぢりバラバラになっているのですが、アメリカ軍が戦車も上陸させ、残留兵の掃討にとりかかっています。
田丸は本隊への合流を目指すのですが、そこで見たのは洞窟に籠もる味方の兵士を火炎放射器で焼はらうアメリカ軍の姿ですね。

その後、ようやく友軍の部隊と合流した田丸だったのですが負傷して「死を待つばかりの兵士から「功績係」として仲間の戦死状況の聞き取りをしていくのですが、これはかなり精神的にダメージを受ける仕事ですね。

そして、洞窟に籠もる日本軍は、夜間にアメリカ軍へ一矢報いるため、負傷して動けない味方の兵士を見殺しにして急襲を図ろうとするのですが、戦果はなかなかおもうようにでず、負傷兵がでるばかりです。

巻の後半では、あくまでもペリリュー奪還を図るため、増援を計画する日本軍と迎え撃つアメリカ軍の戦闘が描かれるのですが、最終話ではペリリュー島攻略・防衛の目的であった「フィリピン」を巡って、アメリカ軍が奪還のためにフィリピン上陸に成功していて、ペリリュー島攻防戦は、徐々に戦略上、無意味な戦闘へと変化していっています。

第3巻 補給も途絶え、ペリリュー守備隊は崩壊間近

第3巻の構成は

第16話 空腹の日
第17話 散開
第18話 爆煙の道
第19話 家路
第20話 戦利品
第21話 請願
第22話 仲間
第23話 11月24日(前編)

となっていて、島の中の洞窟に潜伏し、アメリカ軍への反撃を夢見る日本軍なのですが、目の前の問題は「食料」と「水」です。水は泉の湧水を汲み、食料は島のあちこちに隠してある「備蓄食糧」を探すのですが、探査の途中でアメリカ軍に見つかり命を落としたり、食料を持ち帰るところをみつかって潜んでいる洞窟を発見され掃討されることが相次ぎ、戦力がじりじりと削られていっています。

田丸と吉敷はアメリカ軍の攻撃を避けて逃走しているうちに、離隊してジャングルに隠れていた「小杉伍長」と合流し、3人で潜伏生活をおくるのですが、発見した備蓄食糧につられて、ジャングルの逃げ込んでいた友軍が続々と加わり、大部隊になっていきます。

一方、ペリリュー島での反撃を統括する「ペリリュー地区隊本部」のほうでは、負傷兵が増加するにもかかわらず、食料や医薬品、武器弾薬の補給がなく、アメリカ軍の総攻撃を受けて全滅を待つばかりの状況となっています。
この絶望的な状況で、地区本部隊長の下した決断は・・という展開です。

第4巻 守備隊本部が玉砕する中、田丸たちは子どもたちに救われる

第4巻の構成は

第24話 11月24日(後編)
第25話 臨界点
第26話 掃討部隊
第27話 包囲網
第28話 生存本能
第29話 山の中 海の中
第30話 ひみつきち
第31話 祈りの日

となっていて、ペリリュー島へのアメリカ軍上陸から71日後、周囲を奉仕されたペリリューを守備する「地区隊本部」では隊長、側近、重傷者が自決をし、残ったわずかの健在者の組織する遊撃隊が攻撃してくるアメリカ軍に対し斬り込みを行い、玉砕します。

ただ、すべての兵士が玉砕したわけではなく、片倉兵長率いる一隊は、洞窟に潜伏し、アメリカ兵の死体を凌辱しながら反撃を試みています。ただ、アメリカ軍の掃討はキツくなって残る兵士はどんどん少なくなって言っていて、全滅も間近か、といった状況です。

そしてついに、片倉兵長たちが立てこもる洞窟を発見したアメリカ軍は大量の土嚢とセメント材料を戦車に積んでやってきます。彼らは土嚢で洞窟の入り口を塞いだ後に、セメントを流し込み・・という展開です。

一方、ジャングルにいる田丸たちの隊は、備蓄米を探しながら潜伏を続けているのですが、熱暑の中で腐敗した食料を食って食中毒で死んだり、アメリカ軍の掃討にあって死んだりと、こちらもだんだんと削られていっています。

そして、待ち伏せするアメリカの掃討軍の猛襲をうけて、隊の兵士が継ぐ次と斃れる中、田丸と吉敷は包囲するアメリカ軍を切り開き、海岸部へと逃げ出すことに成功します。アメリカ兵を斃した後、昏倒した田丸と吉敷を助けてくれたのは、現地の住人の生き残り「ニーナ」と「ケヴィン」で、という筋立てです。
戦闘の続く中、二人の子どもたちとの「ふれあい」は感動的です。

レビュアーの一言

「ペリリューの戦い」で悲劇的だな、と感じるのは小さな島での戦闘にもかかわらず、日本軍が戦死者1万、戦病者5百、アメリカ軍が戦死者2千5百、戦傷者8千5百、戦病者2千5百以上、という両軍とも多くの損害を出しながら、戦略的に損害に見合う価値があったかどうか、というところです。

日本側にはこの犠牲によって、硫黄島戦、沖縄戦の前哨戦としてアメリカ軍を足止めしたという評価もあるのですが、双方の本来の目的であった「フィリピン防衛と奪取」の点では、アメリカ軍のフィリピン再上陸がパラオ戦線とはほぼ関係なく成功しているため、残念ながら本来の両軍の意図とは関係ないところで激戦が展開されたといわざるをえませんね。

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