幸風はガダルカナルから東南アジア哨戒へと任務変更。日本軍は退潮の兆し=「艦隊のシェフ」3〜5

第二次世界大戦中の激戦が繰り広げられた太平洋。アメリカの海軍との戦いの最前線にいた駆逐艦「幸風」を舞台に、兵士のために艦橋の真下で「メシ」をつくることで「戦」を支えた飯炊き兵の物語『池田邦彦・萩原玲二「艦隊のシェフ」(モーニングKC)』シリーズの第3弾から第5弾。

前巻までで、沈没した空母「蒼龍」から駆逐艦「幸風」へ配置転換され、小規模でアットホームな駆逐艦内での烹炊に慣れてきた主計兵・賀津夫は、トラック泊地をへて、地獄の戦場・ガダルカナルへと転戦していきます。

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あらすじと注目ポイント

第3巻 幸風はガダルカナル島への補給を担当し、賀津夫はガダルカナル島へ漂着

第3巻の構成は

第十五糧食 長岡名物 水まんじゅう
第十六糧食 ネズミ輸送とすき焼き
第十七糧食 戦艦とシュークリーム
第十八糧食 日米甘物決戦
第十九糧食 ドラム缶とぎんばい
第二十糧食 陸の握り飯
第二十一糧食 別れの親子丼

となっていて、冒頭話では、「幸風」の三等主計兵・名取久蔵、通称「Q作」が、実家の和菓子屋での経験を買われて、戦艦大和で山本五十六長官の好きな「水まんじゅう」をつくるよう命じられます。
これは、陸軍の辻参謀との会食に供されるためのものですが、この会食の目的はガダルカナルへの海軍の補給の強化です。
海軍の食事が贅沢だ、と不快の念を持つ辻だったのですが、長岡の酒まんじゅうを氷水に浸して砂糖をかけただけの「冷菓」が気に入り、山本と原を割った話ができることになります。まあ、名取にとってはお手柄なのですが、この合意の結果、海軍は多くの艦船と兵士を失うこととなってしまいます。

中盤では、ガダルカナル島への物資補給が主務となって戦闘に参加できないため、不満をかこつ駆逐艦の水雷科の兵士たちや戦艦の存在価値を疑う駆逐艦の乗組員といったエピソードが語られます。実際は、ガダルカナル島の飛行場への艦砲射撃で大きな成果を上げるのですが、この戦艦重視主義が後に、日本軍のネックとなったのはよく知られるところです。

後半では、ガダルカナル島への物資の補給を行う「幸風」だったのですが、補給用のドラム缶に巻き込まれて、賀津夫は海に放り出され、ガダルカナル島の海岸へと漂着します。

ガダルカナル島では、すでに最初の攻撃隊であった一木支隊、川口支隊がすでに全滅状態で、第二次総攻撃のために第2師団が上陸していたのですが、補給がうまくいっていません。米と味噌と野草とトカゲを食料とする陸軍の総攻撃前に、賀津夫のつくった料理は、日本人のソウルフードの一つ、握り飯なのですが・・という展開です。

第4巻 幸風はガダルカナルを離れ、東南アジアの哨戒任務につく

第4巻の構成は

第二十二糧食 艦の主の薩摩汁
番外編第一話 帝国海軍とラムネ
第二十三糧食 帰艦祝いのフスマうどん
第二十四糧食 疑惑と海南鶏飯
第二十五糧食 ドーナツと油紙
第二十六糧食 辛子和えと漂流者
第二十七糧食 五目寿司と通商破壊
番外編第二話 曲がったことが大嫌い

となっていて、冒頭話では補給船からのドラム缶を利用して、賀津夫は補給線へと乗り移り、島からの生還を果たします。ガダルカナル島は「餓島」といわれたように、これから日本軍は多くの餓死者を出すことになるので、間一髪の帰還といえるでしょう。
ただ、その補給船も厳格で短気な新任艦長とそれに反発する乗組員との関係が最悪でこのままいくと制御不能となりかけるのですが、ここで賀津夫の作った郷土料理がこの危機を救って・・という筋立てです。(「艦の主の薩摩汁」)

巻の中盤では、幸風に新しく「楠田中佐」と「清水一等主計兵」が赴任してきます。その後、幸風はガダルカナルの補給任務を解かれ、東南アジアの哨戒任務を命じられるのですが、彼らの赴任と関係があるのは間違いないですね。清水一等兵は、普通なら知っているはずのない、タイ米が美味しく食べられる鶏飯の作り方を知っていたり、楠田中佐は哨戒中に発見した敵の軽巡洋艦を見逃させるななど、何か秘密がありそうです。

第5巻 楠田中佐の特殊任務には汚職の影がある

第5巻の構成は

第二十八糧食 軽巡と炸蘇魚片
第二十九糧食 魚雷戦と鯛麺
第三十糧食  ソウルフードと新聞紙
番外編第三話 日本一のコンソメスープ
第三十一糧食 艦上の鑑開き
番外編第四話 ほろ苦い薄皮饅頭
第三十二糧食 ステーキと水先案内人
第三十三糧食 曳航索とドイツ料理

となっていて、前巻で幸風に赴任してきた楠田中佐は自らの特殊任務を円滑に進めるため、幸風の乗務員たちの掌握策を展開し始めます。

まず手始めが、兵隊に食事の改良で、清水の代わりに賀津夫を従兵としてオランダ船籍の貨物船との取引に随行させ、その取引とあわせて大量の糧食を手に入れます。その糧食とともに大量の「ソウギョ」を手に入れてきています。寄生虫をもっているかもしれないソウギョの調理には、清水の知識が役立って、という筋立てで、地元の食材を地元の料理で調理するということから、楠田の「理念」の浸透を図っていきます。

さらに、補給業務ばかりで不満が溜まっている「水雷科」の兵士向けに、敵の駆逐艦で護衛されている「巡洋艦」らしきものを見つけ出し、魚雷で大破させることで彼らの不満を解消し、信頼を獲ち得ていきます。しかし、大破した船からの抵抗がなかったことから、実は巡洋艦ではなく・・といった筋立てです。

そして、楠田中佐はビルマの泰緬鉄道の建設の従事されている元イギリス軍将校から、隠し持っているダイヤを拠出させたり、フランス人のフィクサーから新式の兵器を密輸したりといった秘密行動を取り始めます。

好意的にみれば戦費調達や敵方の秘密兵器情報の入手とも思えるのですが彼の「そもそも国なんてものは幻想だ」という言葉からすると、そう単純に楠田中佐を信頼するわけにもいかず、さらには手に入れたものを横取りしている気配も漂っていて、といった展開です。

レビュアーの一言

今回の時代設定的には昭和17年(1942年)から昭和18年(1943年)の始めにかけてで、ミッドウェー海戦の敗北を経て、日本軍が段々と劣勢に立たされ始めている時期となります。

この後、1943年4月に山本五十六長官の乗る一式陸攻が米軍機によって急襲されて墜落し、北方のアッツ島で守備隊が全滅するなど、日本軍は徐々に退却をせまられてくるのですが、その中で駆逐艦「幸風」と賀津夫はどこへ転戦していくのでしょうか。

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