秘密を抱えた四人のピザ店スタッフが毒殺事件の謎を解く=青柳碧人「クワトロ・フォルマッジ」

都内ながら畑が点在する住宅地を抜けた丘の上にあるログハウス風の小さな個人経営のピッツェリア「デリンコントロ」を舞台に、他人にはひた隠しにしている秘密を抱えた4人の店のスタッフが店主が留守の間の店で遭遇したのは、一見の客が毒殺される現場。
犯人は店にいる4人のうちだれなのか、誰もが秘密を抱え、誰もが嘘をつき、虚々実々の犯人捜しの腹の探り合いが繰り広げられる「一夜」のミステリーが本書『青柳碧人「クワトロ・フォルマッジ」(光文社)』です。

あらすじと注目ポイント

物語は本編で犯人捜しのメインキャストの一人を務める「紅野仁志」が舞台となる勤務先のピッツェリア「デリンコントロ」へ出勤するところから始まります。彼は、30代半ばの元起業家の成れの果てで、バツイチの子持ち、娘の「さやか」は離婚した妻・直子が育てていてるという家庭環境。先輩と一緒に起業したIT会社が潰れて再就職先を探すのですが、なかなか見つからず、妻・直子に冷たくされているところに、この店の「ホール係」の求人募集を見つけて雇われたのですが、無断で正社員となったことを契機に離婚された、という過去をもっています。

この彼が店のオーナー・北村が妻とスキー旅行へ出かける一日間、明るさを売り物の25歳の美人の厨房担当「宮田久美」、普通の四年制大学に通う美人女子大生という風情ながら、実はイラストの道に進みたくてアングラで活動していて、密かに紅野に惚れているホール担当の「八木沼映里」、大きな体のわりに、いつもどんよりした目をしていて口調も暗い、根暗なもう一人の厨房担当「片山伸也」の3人で店を回すことになったのですが・・という筋立てです。

少しネタバレしておくと、「紅野」は少しKYなところがあって、離婚後、月1日、認められていた娘との面会も妻が嫌ってなかなかあわせてもらえないこと、「宮田久美」は高校時代に妻帯者の警察官と不倫したことがきっかけで、妻帯者を誘惑して虜にし、相手の家庭を壊すのが趣味で、今も店のオーナーと不倫していること、「八木沼映里」は土呂和久則という企画会社の男がもちかけたイラスト集を出版するという詐欺にひっかかって、今まで貯めてきた貯金のほとんどを巻き上げられていること、「片山」は実は厚生労働省の麻薬取締官で、このピザ店で麻薬の取引があるという情報から潜入調査員としてもぐりこんでいること、といった秘密をそれぞれに抱えています。
さらに宮田は事件がおきてからのところで、オーナーと共謀して法律で禁止されている品物を隠してもいるようです。

で、これぐらいの秘密であれば、一日ぐらい店を営業するのに何も支障になることは通常ないのですが、閉店ぎりぎりにやってきた一人の男性客が、店の常連の老夫婦がよく座って食事する奥の席に座って、注文したマルゲリータを四分の一食べたところで悶絶して、血の泡を吹いて死んでしまうという事件がおき、しかも、この男が八木沼映里を騙した「土久呂」本人。さらに、事件の通報で駆け付けた近所の交番のお巡りさん「中村」と「的場」が「宮田久美」の昔の不倫相手で、ということで、この殺人事件の犯人が店の関係者である疑いが一挙に浮上してきます。

ということで、ピザ店でおきた一つの「殺人事件」を、立場がちがい、秘密を抱えた4人のスタッフがそれぞれの目線で語る、という異色のミステリーが展開していきます。「土久呂」を殺した犯人は、スタッフ4人の中にいるのか、麻薬は店の中に本当にあるのか、オーナーと宮田久美が隠しているものとはいったい何、という感じで、謎と謎とが混じり合いながら物語が進んでいきます。

レビュアーの一言

本書のタイトルである「クワトロ・フォルマッジ」というのは、ピッツァの一つで「四種類のチーズ」という意味なのですが、どの種類のチーズを遣うべきかといった決まりきった公式のレシピはないようです(このあたりとてもイタリア的といえますね)。
本書ではペコリーノ・ロマーノ、モッツァレッラ、ゴルゴンゾーラ、パルミジャーノ・レッジャーノが使われているのですが、ペコリーノ・ロマーノの代わりにロンバルディア地方でつくられ、ウォッシュタイプで赤い表皮をしていて爽やかな風味の「タレッジョ」が使われることも多いようです。
ちなみに「Pizza-Hut」の「とろける4種チーズのフォルマッジ」は「モッツァレッラ」「カマンベール」「パルメザン」「クリームチーズ」の組み合わせだそうです。

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