始皇帝が死し、反乱勃発。劉邦は沛の反乱軍の親玉となる=高橋のぼる「劉邦ーRYUHO」5・6

五百年以上続いた中国の戦乱を、その冷徹な指導力と秦国の武力によって、始皇帝が統一してからおよそ十年後、万里の長城や亜房宮の建設による重税と国民の強制使役による疲弊、焚書坑儒や滅ぼされた六カ国の遺臣たちに不満によって、秦国が倒れていく中、一介の庶民の出身からスタートし、秦の後を継いだ漢帝国を打ち立てた「劉邦」の活躍を描くシリーズ『高橋のぼる「劉邦ーRYUHO」(ビッグコミックス)』の第5弾と第6弾。

前巻までで、山西省から沛へやってきた富商の呂家の長女・呂雉を娶ってから3年後、驪山に建築中の始皇帝の陵墓の建設の労役人を連れていく任務を任されたものの、その半数が途中で逃亡してしまう事態となった劉邦なのですが、ここで彼の人生一番の転機となる、反乱の狼煙をあげることとなります。また、始皇帝の健康状態も悪化し、秦帝国が大きくゆらぎ始めていきます。

あらすじと注目ポイント

第5巻 始皇帝は巨大鮫の肝で中毒死し、二世皇帝の暴政で天下が乱れる

第5巻の構成は

其之三十一 大鮫之夢
其之三十二 射鮫飲羽
其之三十三 人身御供
其之三十四 白虹貫日
其之三十五 適材適所
其之三十六 対懣勝負
其之三十七 探偵蕭何
其之三十八 農民蜂起

となっていて、前半は、半魚人と闘う夢を見た始皇帝が、方士・安蘇の夢占いに従って、巨大な鮫を捉えて、不老不死の仙薬としてその肝を喰らおうとするところから始まるのですが、このことが彼の死期を早めてしまいます。

鮫の肝には、スクアレンやアルコキシグリセロール、ビタミンなどの栄養素をたくさん含んでいるとして、潰瘍の治療や肝臓の滋養強壮薬として「鮫肝油」がつくられているのですが、副作用として、発疹や嘔吐の症状がでることもあり、生で食ってろくなことはないと思います。

そして、始皇帝が巡行中に死亡したことが、皇位継承に宦官の趙高を始めとする佞臣たちの介入する隙きを与えることとなり、これによって始皇帝が戦国七雄の秦以外の六カ国を滅ぼして統一した中華が再びきっかけをつくってしまうこととなります。

「キングダム」などでは、中華統一の理想に燃えていた秦王・政=始皇帝なのですが、この物語では、不老不死にとりつかれた暴君と化しています。

一方、連れてきていた労役人の半数が脱走してしまった劉邦は、残りの人間も解放し、咸陽へは自分独りで行く、と宣言します。仲間の命を救い、自分一人で責任をかぶる姿勢に皆は感心するのですが、ここは劉邦なりに別の魂胆、部隊を解散させておいて自分も逃亡するつもりです。

しかし、この逃亡の途中で、雨乞いのために大沼に棲む白い大蛇に生贄として捧げられようとしている、美少女を助けたことから、村人たちの尊崇を集め、その評判が伝わって、逃亡していた労役人たちが劉邦のもとへ還ってきます。そして、劉邦は、近隣の乱暴者たちを統括していた「紀信」の武装集団も吸収し、千人の集団をまとめていくことになります。

第6巻 劉邦は「沛公」となり、沛の反乱軍の親玉となる

第6巻の構成は

其之三十九 即刻死刑
其之四十  故郷凱旋
其之四十一 天翔項羽
其之四十二 同郷廬綰
其之四十三 劉邦初陣
其之四十四 軍師千金
其之四十五 劉邦同舟
其之四十六 鎮魂楚歌

となっていて、前巻で始皇帝が死去した後、趙高によって推戴された二世皇帝・胡亥の暴政による不平不満が充満し、とうとう陳勝・呉広の農民反乱軍が決起し、これをきっかけに中国各地で反乱が勃発します。

農民反乱軍は、秦の役人たちを次々と血祭りにあげているため、沛県の毛知事もそれを怖れて、千人の武装集団を率いる劉邦を抱き込んで、農民反乱軍へ寝返ろうと画策を始めます・劉邦を陰で応援する蕭何は、これを契機として、沛県の統治を彼に任せるつもりなのですが、この企みが毛知事の副官にバレてしまい、蕭何の命が危なくなるのですが・・という展開です。

結果的には、沛県の顔役である王陵たちの決起を招き、沛県の住民は劉邦の武装集団に城門を開き、城内の兵士も劉邦の軍門に下ることとなりますので、蕭何の目論見は見事成功した、というところです。

この後、劉邦は「沛公」と名乗り、兵を三千まで増やして、反乱軍鎮圧にやってきた秦軍の八千の兵と対戦するのですが・・という展開です。少しネタバレしておくと、勝つには勝ったのですが、かなり下品な勝ち方に間違いないです。

一方、将来、劉邦と覇を争うこととなる項羽も会稽郡の郡守・殷通を血祭りにあげて、反乱を起こします。こちらは、名門「項家」の若大将ということで、すでに八千を超える兵士が集まっています。しかも、旧「楚国」の強兵が多数参画している、というのが劉邦たち農民軍と違うところですね。

レビュアーの一言

第6巻の終盤で、項羽と劉邦、二人が軍師として迎えたがっていた「黄石公」は、秦の時代の人で、後巻で劉邦の参謀となる「張良」に兵法書を与えた人とされています。

彼は、周の文王の軍師であった「太公望」が書いた兵法書を撰して、人材を集める必要性や政治の要点をまとめた「上略」、策略の必要性や組織の統治論をまとめた「中略」、国を治める要点や臣下の使い方をまとめた「下略」から構成されている「三略」をまとめています。

おそらく、太公望や黄石公の名を借りた「偽書」だろうといわれているのですが、内容的のは古来から優れた兵書だといわれているようですね。

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