道真、頭脳明晰な探偵として、本格デビュー ー 灰原薬「応天の門 2」(バンチコミックス)

学問の神様・菅原道真と、天下のプレーボーイ・在原業平が、宮中の権力を一手に握ろうとしていた藤原北家の長・藤原良房と、その養子・藤原基経相手に抗いながら、平安京の闇の中の謎を解いていいく時代ミステリーの第二巻。

前巻で出来上がった「在原業平」との腐れ縁はますます強固になる道真が、事件を解決していくうちに、兄の変死の真相に気づく巻でもある。

【収録と注目ポイント】

収録は

第六話 怨霊出ずる書の事
第七話 藤原高子屋敷に怪の現れたる事 一
第八話 藤原高子屋敷に怪の現れたる事 二
第九話 鏡売るものぐるいの事 一
第十話 鏡売るものぐるいの事 二
番外編 白梅のおしごと

となっていて、まずは、道真が通う、当時の最高学府・大学寮におきる不吉な書物の謎を解く「第六話 怨霊出ずる書の事」からスタート。

筋立てとしては、大学寮の道真の師である橘広相の友人が唐から持ち帰った書物に関する話で、この本の写本を移そうとすると、夜になると怨霊とか物の怪、妖艶な美女が現れる怪異が生じるというもの。


広相の友人は唐から帰る途中に流行病で死んでおり、その念が憑いたのではと噂されているというものである。
この書物を借りた道真も、怪異を見るのだが、それを「怪異ではない」と謎を解いていくあたりに、彼の理詰めな科学者らしいところが発揮されますね。

第七話・第八話の「藤原高子屋敷に怪の現れたる事」は、在原業平と浮名を流して伊勢物語にも記述のある「藤原高子」が、清和天皇の後宮に入内するまで、父の藤原良房や兄の藤原基経によって、軟禁されているのを、業平に頼まれた道真が悪知恵を出して、軟禁状態から解放する話。

渋る道真を説得するのに高子が持ち出した「お礼」というのが「唐墨」というのがなんとも「雅」でありますな。

第九話・第十話の「鏡売るものぐるいの事」は、道真の悪友・紀長谷雄が手に入れた唐モノの「古鏡」の話。

長谷雄は、その鏡を「布一反」で買ったというが、闇商売をしている「昭姫」の見立てでは、唐より古い晋代のもので、絹二十反以上するという甲賀なものであるらしい。長谷雄は、貴族の下男をしている男から買ったというので、この男の行方を探しているうちに、その男が乱心して、宮中の書庫に閉じこもるという事件となる。
その男の様子に、道真は、亡き兄の死ぬ直前の様子を思い出し・・、という展開で、道真の兄の死の原因に及んでいくのだが、詳しくは原書で。

【レビュアーから一言】

頭脳明晰なのだが、人嫌いの「道真」が業平と関わっていくうちに、どんどん腕利きの探偵っぽくなっていくのが興味深いですね。
そして、平安を舞台にした単純な謎解きではなくて、藤原北家の陰謀があちこちに見え隠れするところが、歴史ミステリーと政治ミステリーとをミックスした魅力を醸し出し始めてますね。

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