「雑談」はビジネスの強力な武器 ー 小川晋平・俣野成敏「一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか?」

雑談の効用というのは、 職場環境の改善や「働きやすい職場の構築」といった、コミュニケーションの活性化による「組織内部」の効用のベクトルと、取引先企業との意思疎通の円滑化や、新しいビジネスチャンスの発見といった「組織外」へのベクトルの双方向性があることは皆さんご存じのとおり。

本書は冒頭のほうで、端的に「お金になる雑談」をテーマにしている、と表現したり、 「雑談」とは「 ビジネス上の意図をもってしかけていく非公式のコミュニケーションすべて」と定義づけているので、後者のほうのベクトルのビジネスノウハウ本と考えていい。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに
第0章 戦略的雑談とはなにか?
第1章 相手の心が開く雑談の基礎
第2章 情報を引き出す質問と相づちの技術
第3章 世代差を飛び越える雑談
第4章 交流会・飲み会が有意義になる雑談
第5章 社内で有利なポジションをつくる雑談
第6章 営業が思い通りに進む雑談
おわりに

となっていて、まず本書を読むうえでおさえておかないといけないのは

ビジネス的に言えば 会話の冒頭で家族の話をするのか天気の話をするのか、あるいはプレゼンの第一声で笑いをとるべきか否かといったことは、 正直、どっちでもいい

はっきり言えることは一流のビジネスパーソンほど意識的に雑談を活用しているということ。

というところで、本書の場合の雑談は、「ビジネスのツール」であり、「ビジネスをうまく進めるためのノウハウの一つ」といったところから読みすすめるべきですね。

そのため、本書の雑談の技術は

人は自分の欲求をなかなか素直に話してくれませんので、このように世間話風の対話で相手のライフスタイル(やその変化)を聞き出すことができれば、その後の絞り込みが断然ラクになり
(略)
相手が心を開いてきたら、さらに雑談を通して「相手が絶対に譲れないこと」(「絶対に欲しいもの」と「絶対にイヤなもの」の2種類)を探り出していき

であったり

社内でもまったく同じで、仮に自分で考えた企画を上司に承認してほしいと思ったとき、わざわざ上司と公式なテーブルで対峙する必要などありません。  上司のことをよく知らないのであれば、ごく自然に雑談をしかけて、上司の価値観を知ることが先決(ヒアリング)。

といった風で、会議や折衝といった「フォーマル」な活動を補完、ないしは代替する「インフォーマル」な活動のテクニックのアドバイスである。

なので、よくある雑談本で、「自分の失敗を語って相手の心を開こう」といったアドバイスも本書の場合は

自分の過去について話をするなら、いまよりダメな話をするのが基本です。昔の自分を低くみせて相対的に今の自分の評価を上げる、期待値調整が目的です。
その際、 いくら辛い経験をしてきたからといってそれをシリアスに語ってはいけません。

であったり、雑談をする目的も

雑談を戦略的にこなすというのは、相づちや質問を駆使して聞きたい方向に話を誘導していくことなのです。 主導権を渡すふりをして主導権を握る

と、ちょっと営業戦略的な「変質」をしているのだが、もともとビジネスの場面での「雑談力を磨こう」といった動機のビジネスマンであれば、ここはむしろ嬉しい変化球であろう。

といいつつも

会話の持ち時間が1分しかないなら自分も話す必要はあるでしょうが、たいていの場合、理想の配分は相手 70%、自分 30%程度です。これを実現させるためには、「100%聞く」くらいでちょうどいい。それくらい、人は自己主張をしたがる性分を持っている

ドキドキを語るときのコツはなるべく具体的な障害をイメージさせること。「いまはこういう壁がありますが、絶対に乗り越えられます。なぜならこういう人たちが味方についていますから」と、障害を提示しつつその不安を和らげることができると理想的です。

といった感じで、雑談への心理学の応用にもしっかり目配りしているので、そこはご安心を。

このほか「土俵際理論」とか「オセロ理論」とか、テクニカルなTipsもアドバイスされているので、詳しくは原書で確認してくださいね。

【レビュアーから一言】

「雑談」をビジネスの技術として活用するというスタンスで書かれているので、テクニカルなところが多くみられるビジネス本なのだが、多くのビジネスマンにとっては、ふあっとした雑談力の本よりも、実務のところで使えるものは多いかもしれませんね。

ちなみに「一流の人は」シリーズは、他のテーマを扱ったものも出版されているので、それらと合わせて読むのがおススメですね。

一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか?

一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか? 一流のこだわりシリーズ

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