あなたの職場の「隣席」の外国人とうまくやっていくには ー 千葉祐大「異文化理解の問題地図」

今まで外国人の社員・労働者というと、大手企業か、あるいは実務研修生を受け入れている製造業、あるいは、男性が通う〇〇といったところが多くて、一般の日本の働く現場では、ちょっと遠いところにあることだったのだが、人手不足の深刻化や入管法の改正などで、にわかに身近な問題として議論され始めた気がする。

とはいいながら、では現実的に、その受け入れがしっかり馴染んだものになっているかというとそういうわけではなく、体制の話もだが、実際に受け入れる「職場」の環境的には、ギシギシしたところが、これを契機に顕在化しているようだ。

ということで、新たな「職場の問題地図」となってきている、この問題について、実際の受け入れのコンフリクトを、日本人側・外国人側、双方の立場から解決の道筋をアドバイスしてくれるのが本書『 千葉祐大「異文化理解の問題地図(技術評論社) 』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにー職場が外国人だらけの時代がやってきた
1丁目 指示が正しく伝わらない
2丁目 主張だらけ
3丁目 チームワーク不全
4丁目 空気を読めない
5丁目 自信過剰
6丁目 すぐに辞める
おわりにーまずは小さなことから始めてみよう

となっていて、この問題でまず上がってくる「外国人になぜ言っていることが伝わらないんだ」ということの根本には

①伝わりにくい言葉を多用する(「あいまい言葉」「カタカナ言葉」「専門的すぎる用語」が多い)
②伝わりにくい話し方をする(「無表情」「ボソボソ話す」「滑舌が悪い」で伝わらない)
③言わなくてもわかると思っている(テレパシー問題)

とされているのだが、思い当たるビジネスパーソンの方々も多いはずで、意識しないでやってしまうところが一番の課題。

この処方箋として本書で提案されているのが「言葉の量は5割増し」「「理由」と「目的」を必ず伝える」「「イエス」「ノー」を明確にする」というもので、今までの常識をチャラにして、「伝え方」についてしっかり考えたほうがいいようだ。もっとも、これは「外国人」だけでなく、「いまどきの若者」に話は伝わらない、と愚痴をこぼす「上司」の方々も参考にしたほうがよいと思いますね。

さらに、意外な視点だったのが、「自己主張が強すぎる」「大風呂敷を広げる」「自分のミスを頑として認めない」といった、外国人の同僚や部下をもったビジネスマンからよく出る話に対して、よくある「外国は日本と違って多民族の厳しい競争社会だから」とか「外国の労働環境はすべて「契約」で決めるから」といった理由のほかに

日本で働く外国人(とくに高度人材)の多くは自国のエリートもしくは上位層。人並み以上にプライドを持っています。

といった点をあげているところで、とかく「外国人」と十把一絡げにしてしまいがちな日本人は反省すべきところでしょうね。

このほか、「個人プレーが多い」とか「空気を読もうとしない」といった、この話でよく出てくる課題についても、外国人の思いをちゃんと踏まえながらのアドバイスがされているので、詳しくは原書で確認してくださいな。

【レビュアーからひと言】

もともと日本文化というもの自体が、中国をはじめとした大陸や、南蛮という表現に代表される西欧から入ってきたものに影響を受けながら成立しているものなので、本来、固有のものだけではないはずなのだが、「働く環境」の話になると「日本固有の」「日本古来の」といった言葉が出てくるのが不思議なところではある。

ただ、グローバリズムの進展と、日本の人口構造の変化などを考えると、外国人労働者の問題は避けては通れない問題であることには間違いなくて、課題を抱えて悩むビジネス現場もこれから増える一方だろう。そんな悩めるビジネスパーソンに、外国人の「気持ち」を踏まえた本書のアドバイスはいろいろ参考になるのではないでしょうか。

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