「1on1」ミーティングの「基本」に立ち返ってみよう

人材育成や社員評価の話題で、最近、見ないことのほうが少ないのが「1on1」という手法。とりわけ、新型コロナウィルスの感染拡大の中で、リモートワークが多くの職場で広がる中、社員のモチベーション管理や、メンタル状況の把握の面でも活用する組織が増えていっています。
ただ、その効果的な「やり方」となると、闇雲に部下を捕まえて、上司があれこれと詰問調に聞き取りをするといった、ミーティングなんだが、「取り調べ」なんだかわからない事態も職場によって発生しているのは、間違いありません。
きちんと使えば、社員のモチベーションをあげ、チームの結束を高める「1on1ミーティング」を基礎のところから知っておきたいと思っているビジネスパーソンにおススメなのが、「1on1ミーティング」の日本における「始まりの書」ともいえる「ヤフーの1on1」と「1on1ミーティング」の2冊です。

構成と注目ポイント

「ヤフーの1on1」(ダイヤモンド社)のポイント

まず、日本で「1on1」ミーティングという言葉を一挙に広めたといっていい『本間浩輔「ヤフーの1on1」(ダイヤモンド社)』の構成は

第1章 マンガで学ぶ1on1ミーティングの基本
第2章 1on1とは何か
第3章 1on1における働きかけ
第4章 1on1導入ガイド
第5章 ヤフーが人材開発企業をめざす理由

となっていて、「1on1」黎明期らしく、部下との面談を行う上司の二つの場合を対比させるように掲載して望ましい「1on1」である
・部下に十分に話をしてもらう
・話は最後まで聞く
・上司は先に自分の考えを言わない
・上司依存の関係にしない
・行動で終わる
といった概念がまず第1章のところで示されています。

具体的な説明は本書で詳述されているので、そちらに譲りたいのですが、おそらく、この原則、特に「上司が先に自分の考えをいわない」といったあたりは、特にバリキャリの上司がおろそかにしてしまいがちなところなのではないでしょうか。このへんをどう防いでいくかは本書の中の

典型的な1on1の上司の失敗に、アドバイスをしようと思うがあまり、「どういうふうに進めたいの?」「誰かに相談した?それは誰?」などと、自分の理解のための質問をしてしまうことがあります・・・・しかしそれでは詰問になってしまいます。この傾向は部下思いの上司ほど顕著です。

であったり、

ヤフーではアクティブリスニングとあえて英語(方かな)で表記し、「アクティブに聞く」ということだから、ただ黙って相手の話を聞くのではなく、うなづいたり、相槌を売ったり、相手が発したキーワードを繰り返したりすることが大切であると言っています。

といったところが参考になるのでは、と思います。

さらに、

私は、社内の研修において、「上司が投げかけた質問に部下がすぐに答えられないときは「部下が脳みそに汗をかいて考えている」ときだから、大切な時間だよ」と話をすることがあります。そういうときには、答え=言語化をせかしてはいけません。コーチングやカウンセリングでは「沈黙を大切にする」という言い方をしますが、基本的には同じことです。

といったところは、「目鱗状態」に感じる人も多いのでは」ないでしょうか。

このほか、ヤフーにおける導入ガイドや、実際の「1on1」」を導入している企業のトップや担当責任者などと筆者との対談集が随所に掲載されているので、「1on1」導入を本格的に始めようと考えている組織の担当者にはとても参考になると思います。

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「1on1ミーティング」(ダイヤモンド社)のポイント

続く第2弾となる『本間浩輔・吉澤幸太「1on1ミーティング」(ダイヤモンド社)』は、前著である「ヤフーの1on1」が好評を博し、「1on1」を取り入れる企業が増えてきたものの、ブームになることで、研修や解説書も増え、その中で語られる「1on1」のやり方が、それぞれ「流儀」としてとらえられるようになってきた、という危機感からのよぅです。筆者の本旨としては、「1on1」は「対話によって部下のやる気を引き出す」という目的が大事で「やり方」はそれぞれの組織に王子て変わるものという認識だったようですが、そこは「家元」主義の強い日本のことなので、方法論の「神格化」が始まった、ということのようですね。このへんは「トヨタ方式」と似通った現象が生じているようです。

なので、第2弾の構成は、

第1章 1on1とは何か
第2章 企業の取り組みを知る
第3章 なぜ1on1なのか
第4章 1on1の「場外効果」
第5章 専門家の知見に学ぶ

となっているのですが、第1章で「1on1」の基礎をあらためて述べたうえで、第2章以下で、企業の実例によるケーススタディを学ぶ、といった形式になってます。

第1章の「1on1とは、上司と部下との間で行う1対1の対話のことです。その対話はいわゆる業績面談」のような対話とは違い、そこでは上司は聞き手に徹し、部下の話を傾聴します。つまり1on1の30分は「部下のための時間」ということになります」という「1on1」の基礎部分とか、「1on1」の目的である

・部下との信頼関係を構築する
・部下の経験学習を促進する
・ホウレンソウの機会とする
・フィードバックとそこからの学びを得る
・部下とのモチベーションを高める
・意思決定に必要な組織の情報を得る

といった点は、第2章の実践例からエッセンスをすくいとるのに大事なとことなので、ここはしっかり本書でおさえておきましょう。

で、これらをおさえた上での第2章以下の読み方は、読者が属する組織の状態や業態などによって様々な読み方がある、といっていいでしょう。とりあげられている企業は、パナソニック、日清食品といった日本を代表する製造業から、地域を牽引する金融機関の静岡銀行、あるいはリハビリテーション病院と業種業態も様々なので、自分の会社にしっくりくるところをチョイスしていけばよいのではないかと思います。

ただ、「1on1」ミーティングに飛びついて導入したはいいけれど、どうもうまくいかないな、と感じている経営陣や人事関係者は、本書の

トップのコミットメントではなく、正確にいえば、人事の責任者の腹のくくり方が成否を決めるのだと思います。トップの姿勢は、あまり関係ないかもしれない。結局、人事の責任者が日和るから制度が定着しないと思いますね。

であるとか

私は、そもそも危機感で人は動かないと思っています。本間さんの話を聞いて、そうはいってもある程度の危機感を持っているのが健全なのだろうなと思うものの、危機感ではない、もっとポジテイブな方向からコミュニケーションをすることによって、物事が変わっていくんだ、ということが示せると、なおいいんだろうと思います。

であったり、

ヤフーの1on1がうまくいっているのは、部下が「経験学習」を進めることを支援するのが上司の役割だ、と定義しているからでしよう。上司は部下を監督し、評価する人間だ、という定義を会社がしていたら、決して機能しないのだろうなと思います。

といったところを、もう一度、点検してみたほうがいいかもしれません。案外に「仏つくって魂入れず」の状態になっていることがあるのかもしれません。

このほか、「1on1」を行う上での「台本(スクリプト」や、筆者と組織開発や経験学習。カウンセリングの専門家との対談集のところでは、ふいに腹落ちする言葉があるので、「1on1」の実践に悩んだ時には読み返してみるのもいいかもしれません。

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レビュアーからひと言

「1on1」が人口に膾炙するようになって、多くの関係書籍も増え、研修や部下育成の特効薬のように言われるようになっているのですが、普及すればするほど、そもそものところかた離れていくのはよくあることです。そんな時に大事なのは「原典にあたる」ということで、この2つの本を読み返してみるのも良いのではないでしょうか。意外に、忘れていた「基本」のところに気付くかもしれませんよ。

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