未解決のまま迷宮入りした事件に関する「保存文書」を読み解いて再検証し、真犯人を突き止める手掛かりをつかむため、警視庁に特別に設けられた「文書解読班」の鳴海理沙と部下の矢代をメインキャストにする「警視庁文書捜査官」シリーズの第2弾が『麻見和史「永久囚人 警視庁文書捜査官」(角川文庫)』
前巻は連続殺人事件の現場にアルファベットのダイイングメッセージが残されていた、という筋立てだったのですが、今巻はダイイングメッセージに加えて、まったく売れそうにない自費出版本がセットになってます。
【構成と注目ポイント】
構成は
第一章 七セグメントの暗号
第二章 ジェミニ
第三章 稀覯本
第四章 私設図書館
第五章 増殖する本
となっていて、まず第一の事件は、元フィットネスクラブでワイヤーでぐるぐる巻にされた死体が発見されるというもので、現場のクリーム色のタイルに「Aboy」とタイルの目地を使ったダイイングメッセージが残されている。章の標題の「7セグメント」というのは、電卓やデジタル表示の時計の表記のことで、この「Aboy」の表記の方法ろ同じなのですが、これは後に被害者が左利きであることがわかって、別の文字表記とのわかることになります。
そして縛られた状態で耳にヘッドホンをつけられ大音量で、リズムもなくメロディーもない音を聞かされながら腹を刺殺される殺人、浴槽の底に沈めたブロックに首を縛り付け溺死させるとう第二、第三の殺人が発生し、さらには、その3つの事件を結ぶような、被害者たちの名前をもじった人物が出、今回の連続殺人を暗示させるエピソードの入った「永久囚人」という全99巻にもなる自費出版本が発見される。そこには、この3つの事件の被害者をそれぞれ連想させる人物が登場し、本の主人公にひどいイジメを繰り返す場面がでてきていて、理沙たちは、この本が連続殺人の謎を解く鍵となるのでは、と推測し99冊の本の行方を探し始める。
そして、その作者の「有村均」という人物がよく出入りしていた私設図書館があるというので、そこへ文書解読班のメンバーは捜査に入るのだが・・・、という連回。
この自家出版本を書いた「有村」という男の素性と今どこにいるのか、といったところが真犯人を突き止める鍵となるのですが、少々強引なところがある感じがするのは当方だけでありましょうか。
少々ネタバレすると、息子に負わされた傷を、親が変わって落とし前をつける、といった感じです。
【【レビュアーから一言】
今回、文書解読班には、正義感がバリバリに強いのだが、本の類はほとんど読まない、という体育会系の女性刑事・夏目静香が登場します。完全、文化系で本を読み出すと止まらない鳴海理沙警部補とは、水と油の関係で、間に矢代巡査部長が挟まれて右往左往する様子は、第一巻とはまた違った味わいがありますので、ここらもお楽しみください。
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