敏腕警部補は東京~京都間での謎解きするー大倉崇裕「福家警部補の考察」(東京創元社)

小柄で眼鏡をかけた風貌と、いつも警察手帳がバッグのどこにあるかわからなくてもたもたしている様子から、警視庁捜査一課の凄腕警部補ととても思ってもらえないのだが、そこをうまく使いながら、犯人が仕組んだトリックの罠を次々はずしていって、犯人をおいつめていく「福家警部補」シリーズの第5弾が『大倉崇裕「福家警部補の考察」』です。

【収録と注目ポイント】

収録は

「是枝哲の敗北」
「上品な魔女」
「安息の場所」
「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」

となっていて、第一話の「是枝哲の敗北」は大病院の医局の部長をしている医師が、浮気相手の製薬会社のMRを殺害する話です。殺害する場所は、病院から少し離れた立体駐車場の4階で、別の会社のMRの社用車に乗り込んで、駐車場の入り口にある監視カメラをかいくぐって出入り。呼び出しておいた被害者を撲殺するというトリックなのですが、福家は、被害者がはめていた手袋が片方だけ脱がされていたところから犯人の仕掛けを崩していきます。

二番目の「上品な魔女」は、太陽光発電のベンチャー企業の経営をしている夫が、経営難から脱するために、奥さんを殺害して保険金をせしめようと計画します。ところが、妻のほうも夫殺害をすでに知っていて、それを逆手にとって、夫が屋根にその仕掛けを準備するところを利用して返り討ちにするのですが、それを福家警部補がじわじわと明らかにしていくという筋立て。

しかし、この話は単なる夫殺害事件に終わらず、妻は学生の頃から彼女に関わった人がみな不幸になる逸話をもっていることで、なにやらもっときな臭くなります。最後のところは、犯行の自白ではなく、福家警部補の毒殺未遂で決着するところが異色です。

第三話の「安息の場所」は、師匠の思い出を汚そうとするかつてのバーテンダーで今は強請りで暮らしている同僚に、師匠の愛弟子であった女性バーテンダーが復讐をする話。犯行は近くで悪ガキたちに爆竹をならさせて銃の発射音が聞こえないようにしての銃殺なのですが、常連のお客を利用してつくったアリバイを、福家がどうやって見抜いていくか、というところが焦点ですね。お酒は弱い、と言いながら、ジントニック、マティニ、サイドカーと次々呑んでいく福家警部補の酒飲みぶりが印象的です。

最終話の「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」は外資系証券会社のトップ営業マンが、かつての恋人が自殺した原因となったライバル証券会社の営業マンを射殺するという事件と、さらに京都で、亡恋人をパワハラで追い詰めた昔の上司に復讐しようとするのを、偶然、東京駅の待合室で一緒になった福家が、その犯行を暴くとともに、凶器となった拳銃を押収して未然に犯罪を防ぎます。東京駅から京都駅に着くまでの間に、偽アリバイを見破ったり、と彼女の推理が炸裂します。そして、福家が犯人を偶然、隣席になったのが幸いしたよね、と思っているとうっちゃりをくらうので要注意です。

この話では、警視庁いきもの係の須藤さんの永遠のライバルの「日塔」さんとかも登場します。

【レビュアーからひと言】

福家警部補は、事件の真相に迫るために、事件の周辺のあらゆるところに聞き込みに回り、犯人が残してしまった犯行のヒントを掴んでいくのですが、聞き込みに回った人たちに、これからの人生を機嫌よくいきていくための貴重なアドバイスを与えていっています。

たとえば隠居して生きがいをばなくしている酒屋の老主人に再び元気をあたえたり、グレてしまって学校をサボってヤーさんの使いっぱしりをしている若者を再び学校に行く気をおこさせたり、とその活動は多彩です。さらに、今回は電車のプラットホームでの転落事故死にみせかけた殺人事件を見つけ出していくのですが、本巻のどの話ででてくるかは、読者の皆さん自ら探してみてくださいな。

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