「死神さん」の今度の相棒は、警視庁副総監や検視官=大倉崇裕「死神さん 嫌われる刑事」

冤罪裁判によって、収監されていた受刑者に無罪が宣告されるやいなや、本当の犯人探しをすることを任務とする、警察の通常組織のどこにも属しない警察官「儀堂堅忍警部補」。警察の誤認逮捕という古傷をえぐり、全警察組織の嫌われ者、通称「死神さん」が、冤罪事件の真犯人を暴き出していくミステリーの第2弾が本書『大倉崇裕「死神さん 嫌われる刑事」(幻冬舎文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

収録は

「死神 対 天使」
「死神 対 亡霊」
「死神 対 英雄」
「死神 対 死神」

の四篇です。

彼がペアに選んだ警察官は、警察組織のつまはじきとされる運命をもっているようですが、第一話「死神 対 天使」でペアとなるのは、仕事はできるが厳しすぎて部下から苦情の絶えない鑑識課の川代という女性警部。彼女は本シリーズで登場する相棒役の共通項である「窓際」というわけではないのですが、パワハラの訴えが多くて、外部の法医学教室への出向を打診されているという設定です。
で、今回の冤罪事件は、病院でおきた不審死事件で、当直の看護婦が筋弛緩剤の投与疑惑で逮捕起訴されていたものですね。儀堂たちの再捜査によって、被害者の孫がこの事件に絡んでいることがわかるのですが、彼が安楽死を依頼した犯人は実は・・という展開で、この物語の前提である「冤罪事件」というのをひっくり返してくるのですが、真犯人の動機はもっと驚きです。

第二話の「死神 対 亡霊」の相棒は以前は「盗犯捜査」のベテランと言われた刑事「宇佐美」で、彼の黒星事件となった、世田谷区の元質屋の経営者が麻雀大会の優勝トロフィーで頭を強打されて死亡していたのが出入りの家政婦によって発見された事件です。
被害者が保管していた300万のお金がなくなっていたことから、空き巣にはいっていた「座間」という常習犯が捕まるのですが・・という設定です。
今回は凶器となった優勝トロフィーにわかめスープとバナナの成分が付着していたのが、事件の真相を解き明かす手がかりとなります。
さらにネタバレしておくと、この捜査によって引っ張り出された連続窃盗犯の検挙が泣かせる結末になってます。

第三話の、「死神 対 英雄」警察官に向かないためスーパーに転職した元警察官の女性が相棒という異例の組み合わせです。彼女は在職当時、そのスーパーで起きた店長刺殺事件の現場に立ち会っているという縁なのですが、そのスーパーの現店長は、死亡した店長とチェーン・グループ内での売上ナンバーワンと争っていた人物です。
当初、犯人として捕まった二人組が犯行時刻に別の犯罪に関係していたことがわかって、再捜査となったものですが、当然、当時のスーパー関係者が疑われることになり・・という展開です。少しネタバレしておくと、死亡した店長は、店のお客をかばって身代わりになったということなのですが、真実は意外にも・・というのが謎解きのヒントです。

第四話の「死神 対 死神」では、警視庁のナンバー2の副総監を相棒にして、事件の裁判を担当した元最高裁判事の依頼で一家三人惨殺事件の真犯人をつきとめることになるのですが、今まで、自らの捜査に一点の曇りやミスはなかったと信じていた副総監の自信がどんどん揺らいでいきます。
今回は、まだ無罪判決は出ておらず、死刑の執行時間がどんどん迫ってくる中で、儀堂によって、当時見落としていた事実に次々と気付かされ、たどり着いた先と、犯人の動機は意外なもので・・という展開です。

今回も意外な真犯人が明らかにされていくのですが、それとあわせて、相棒となる警察官の復活の「切り札」が注目です。

Bitly

レビュアーの一言

田中啓さん主演でHukuで放映された「死神さん」なのですが、2022年9月17日から、新しいパシリ役に「山本舞香」さんをキャスティングして「シーズン2」が始まります。
シーズン2は全6話となっているので、シーズン1と同様、オリジナルエピソードも盛り込まれているかと思います。原作とあわせてこちらもどうぞ。

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