”お嬢様の目は節穴ですか”のディスりに、宝生麗子負けるなー東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」

金融とエレクトロニクスと医薬品と、ミステリ出版物など、およそ関連性の感じ取れない手当たり次第の分野で世界的に事業を展開する「宝生グループ」の総帥のひとり娘である「宝生麗子」が、その素性を隠して勤務する東京都の国立市にある警察署・国立署を舞台に、これまた日本の誇る自動車会社・風祭モータースの御曹司「風祭警部」の自信にあふれているがトンチンカンな推理に悩まされつつ、管内でおきる難(?)事件の数々を、”他力”で解決していくユーモア・ミステリ―・シリーズの第一弾が『東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」(小学館文庫)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第一話 殺人現場では靴をお脱ぎください
第二話 殺しのワインはいかがでしょう
第三話 綺麗な薔薇には殺意がございます
第四話 花嫁は密室の中でございます
第五話 二股にはお気をつけください
第六話 死者からの伝言をどうぞ
宝生家の異常な愛情

となっていて、宝生グループのお嬢様探偵・宝生麗子さまが、ばったばったと事件を解決していく、とはいっても、事件の謎を解くのは、彼女の家の執事「影山」で、彼が麗子お嬢様から、事件の様子を聞いて推理を働かせる変形の「アームチェア・ディテクティブ」ものなのですが、その推理を披歴する際に、麗子お嬢様に対し、「失礼ながらお嬢様ーこの程度の真相がお判りにならないとじゃ、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」や「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」といった”雇い主”に向けたものとは思えないディスり発言から始まるのが特徴です。

第一の事件「殺人現場では靴をお脱ぎください」では三階建てのアパートで、派遣社員の女性が絞殺体で発見されます。彼女はデニムのミニスカートでカントリー風のシャツ、背中には小さなリュックというお出かけスタイルで部屋に入ったすぐのところに倒れていたのですが、どういうわけか室内であるにもかかわらずブーツを履いたままという状態です。室内にブーツの土汚れなどがないことから、別の場所で殺され、部屋まで運ばれたと、風祭警部は推理を巡らすのですが、一番疑わしい、被害者の交際相手にはアリバイがあり・・という筋立てです。そして、宝生麗子お嬢さまから事件の様子を聞いた彼女付きの執事「影山」は、「お嬢様はアホでいらっしゃいますか」と彼女をディスった上で事件の真相を語るのですが・・という展開です。

第二の事件「殺しのワインはいかがでしょう」は、国立駅近くの大きな動物病院の初老の院長が病院近接の自宅の部屋で毒ワインを飲んで死亡したという事件。彼はその家に勤めている30歳以上離れた家政婦さんと再婚をしようとしたのですが、子どもたちをはじめ家族の反対にあって悲観して自殺したのではと当初推理されたのですが、被害者の送ったメールから他殺では、という疑惑が広がります。しかし、新品のワインに毒を注入したトリックが見つからなくて・・・という展開です。今回の執事・影山の謎解きの出だしは「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」です。

第三の事件「綺麗な薔薇には殺意がございます」は、多摩地区の老舗ホテルの経営者一族・藤倉家の一人息子・俊夫が、結婚相手として家に住まわせるようになった美女・高原恭子が殺され、庭の薔薇園に、薄手のパジャマ姿で裸足のままで畳一枚ほどの広さの台に薔薇が絡ませてある、さながら「薔薇のベッド」の上に放置されていたという事件です。犯人はこの恭子が俊夫と結婚して藤倉家の財産を手に入れるのを阻止しようとしての犯行だと思われるのですが、なぜ、わざわざ「薔薇のベッド」の上に置いたのか。というところが謎解きの鍵となります。

第四の事件「花嫁は密室の中でございます」では、麗子の大学の後輩の自宅内で行われた結婚式での事件です。その被害者・沢村有里は高級レストラン・チェーンの経営者の長女で、このたび、18歳年配の、その家の顧問弁護士と結婚することになったのですが、その弁護士は、もともと、この屋敷に同居している沢村家の本家筋の西園寺家の年齢のいった一人娘にとりいって顧問弁護士となり、そのうち、有里に鞍替えしたという人物で、有里の弟妹からはあまり評判はよくない人物のようです。
その有里の結婚式の当日、花嫁の有里がお酒に酔って自室で休憩していると何者かに背中から刺されてしまいます。悲鳴を聞いて、皆がかけつけるのですが、その部屋のドアは中から鍵が掛けられている密室状態で・・・、という筋立てです。少しネタバレすると「黄色い部屋」的な密室殺人で、現場にかけつけた西園寺家の執事の「お嬢様、どうなさいました」という一言が謎ときの鍵となります。

第五の事件「二股にはお気をつけください」は大手生命保険会社の社員の男性が自室で、全裸状態で殺されているのが発見されます。この男性は、捜査してみると、二股どころか四股ぐらいかけている浮気者で、おそらく、その恋愛関係のもつれから殺されたものと推理されるのですが、殺された当夜、目撃された被害者より10cmぐらい低い身長の女性という条件に該当する女性が、その四股の関係者の中にいません。犯人は誰、そして、死んでいる被害者から服を脱がせ、全裸にして放置した意味は・・・という謎解きです。ここでは、昔、男性週刊誌で通販されていた人気商品の、身長を高く見せるアイテムが、謎解きのヒントになります。

第六の事件「死者からの伝言をどうぞ」では、親切丁寧な接客と冷酷非常な取り立てで業績拡大中の消費者金融の女性社長が自宅の一室で撲殺されているのが発見されます、殺害現場となった1階には、被害者が残したらしい血で書いたダイイングメッセージを消した跡が残されていて、凶器となった重い野球のトロフィーは二階の部屋に投げ入れられているのが発発見されるのですが・・・という筋立てです。容疑者には被害者が殺害された夜、会社の経営方針を巡って被害者と言い合っていた長男を筆頭に、被害者の三人の子どもたちが浮かぶのですが、三人とも明確なアリバイがなく・・・という展開です。

レビュアーから一言

このシリーズの持ち味は、麗子お嬢様の執事の影山が、明確で鋭い「推理」で犯人とトリックを暴く前に、必ず麗子お嬢様にかける「ディスり」の一言のキレの良さで、本書は、誰か具体的な俳優さんを思い浮かべながら読むのが当方的はおススメです。
2011年に放映されたテレビ版では、「影山」に桜井翔さん、「宝生麗子」には北川景子さん、「風祭警部」には椎名桔平さんというキャストでしたが、すでに10年経過していて、その頃のイメージとはちょっと違ってきているので、あなたなりの「見立て」をしてみてくださいな。

謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)
「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」 令嬢刑事(デカ)と毒舌執事...

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