黒井マヤ姫が連続放火殺人の謎を解くー七尾与史「ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」

漆のように黒くつややかな髪を方の下あたりまで伸ばし、日本人形を思わせるやや切れ長の目に通った鼻筋と、かすかにつり上がった上品な唇と白磁のような肌をもつ極めつけの美人なのだが、口を開くとタメ口で、スプラッタ映画と殺人事件が趣味という、警視庁の刑事・「黒井マヤ」巡査部長を主人公に、彼女のお守役として抜擢された「代官様」こと「代官山脩介」巡査とともに、連続して起きる怪奇な殺人事件の謎を解く「ドS刑事(デカ)」シリーズの第1弾が本書『七尾与史「ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」(幻冬舎文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

物語のほうは、シリーズのスタート巻ということで、冒頭で遠州鉄道の車内で浜松市の「三ヶ日みかんの丘公園」の観光ポスターに見入っている「黒井マヤ」の姿から始まります。「三ヶ日」ってのは静岡県浜松市の一部で、昔、旧石器時代の人類ではないかと言われた、三ヶ日人(後に炭素測定で、縄文時代の人骨と判明)が発見されたところですね。

今回、マヤは、亡くなった母親のことを涙ぐみながら語る父子の頭を叩いて下車する乱暴ぶりを見せるのですが、この「「三ヶ日みかんの丘公園」というのは後半部分で事件の謎解きに大きく関係してくるので覚えておきましょう。

事件のほうは、まず浜松市の中心部の3階建てのマンションで火事がおき、現場から男女二人の焼死体が見つかります。死んだのはもとヤクザと、キャバクラ嬢で、彼らが美人局で恐喝を繰り返していたのと、部屋の中にはガソリンの入った牛乳瓶4本が発見されたことから、放火による殺人の線で捜査が進められることになります。

この捜査にあたることになったのが、静岡県警捜査一課の捜査官たちと、警視庁から臨時に静岡県警に派遣されていた「黒井マヤ」巡査部長、そして、浜松中部警察署の強行犯係の刑事たちなのですが、黒井マヤのお世話係として抜擢されるのが、中部署の若手でイケメン警察官。代官山脩介です。

「黒井マヤ」は、なんと次期警察庁長官間違いなしと言われる、黒井警察庁次長の愛娘で、いままでマヤの機嫌を損ねて、左遷された警察官が多数いるという黒歴史から、代官山に彼女のお守りをするという大役が任されたわけですね。もっとも、彼の役目はこれだけでなく、捜査に重要な役目もあるのですがこれはまた後で。

そして、この放火事件はこれだけでは終結しません。

この元ヤクザとキャバ嬢が脅迫して金を巻き上げた、結婚詐欺師が次に焼死し、次にはこの結婚詐欺師が、脅迫金を捻出するためにお金をだまし取ったアラフォーのOLが焼死体で発見され、という感じで悪意が呪詛返しをされるようにして、つぎつぎと悪意を抱いた元へと連続放火殺人が遡っていきます。

そして、最後に營業車で飲酒運転事故を起こしたせいで会社をクビになった会社員が焼死させられることで、この悪意の連鎖も終わりを告げるかと思ったのですが、実は、この連続放火殺人には隠された共通性があることがわかります。それは、最後の会社員の起こした飲酒運転事故で救急車の到着が遅れて息子が死んでしまい、後追い自殺をした娘の敵をとるという母親の怨念が隠されていたのです。この謎を解き、犯人のもとへ向かった黒井マヤを追って、代官山も、最後の焼殺を阻止すべく後を追いかけるのですが・・といった展開です。

ところが、最後の最後で、黒井マヤの掴んでいた真相は、もっと深いところにあることが明らかにされるので、ここで最後まで気を抜かないで読んでいきましょう。

レビュアーから一言

死体好きで、タメ口、ドSのお嬢様刑事、というキャラと、相棒の代官山たちを振り回してく彼女の行動で、ユーモアラスで軽快なタッチで展開していく本作なのですが、実は、放火連続殺人というかなり猟奇的な殺人である上に、その謎解きにもあっと驚くドンデン返しが用意されています。

見た目の甘そうな感じに騙されて、中に仕込まれたとんでもない辛味に打ちのめされないよう気をつけてご賞味ください。

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