内藤了「ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」+「ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」=比奈子を狙い、連続殺人鬼が脱獄する

八王子西署の刑事組織犯罪対策課に勤務する、長野県出身で、八幡磯五郎製の七味唐辛子を常用する女性警官・藤堂比奈子が、ベテラン刑事の「ガンさん」こと厚田巌夫、東大法医学部の教授で「死神」と異名をとる石上妙子、鑑識課のオタク鑑識官・三木健、同僚のKY警察官・東海林恭久、バイク乗りのイケメン刑事・倉島とともに、都内でおきる奇妙で凄惨な死亡事件の謎に挑んでいく「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズの第五弾と第六弾が本書『内藤了「ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(角川ホラー文庫)』『内藤了「ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(角川ホラー文庫)』です。

前巻で詐欺に巻き込まれて息子たちの工場を潰された親たちが復讐を果たす事件を解決した比奈子たちだったのですが、今回は第2弾「CUT]で逮捕した連続殺人鬼・佐藤都夜の信奉者が現れ、彼女に触発された猟奇事件の謎解きに挑むとともに、脱獄した都夜と比奈子が対決します。

あらすじと注目ポイント

「ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」=乳幼児を犠牲にした連続殺人起きる

第五弾の「ZERO」の構成は

プロローグ
第一章 鬼無き里の鬼の業
第二章 異形の死骸たち
第三章 変態法医昆虫学者
第四章 インゲンテントウ
第五章 永遠の翼
第六章 メドゥーサの首
エピローグ

となっていて、第2巻で藤堂比奈子によって逮捕された連続殺人鬼・佐藤都夜が彼女のファンと称する「鈴木ひろし」という人物と獄中から文通を始めているところからスタートします。彼女は、まつり縫いの暗号を使って、自分を拘束し、丹精こめてつくった人皮のトルソーを焼きはらった比奈子への復讐を「鈴木ひろし」に準備を始めさせていきます。

事件のほうは、千代田区の麹町で猫を生きたまま焼き殺すという動物虐待事件に始まって、麹町中学校の非常階段に整然と雀と鳩の死骸が並べられるという事件、浅草寺の境内から、香炉の灰の中に、乳幼児の指が線香のように遺棄されている事件が連続します。

一見、これらの事件に関連性はなさそうなのですが、その後、有楽町のガードポールに目玉をくり抜かれた猫の頭が置かれ、その口の中に乳幼児の目玉が押し込まれていたり、神保町のゴミ箱に捨てられていた猫の生首の舌が乳幼児のものをすりかえられていて、一挙に猟奇犯罪として浮上してきます。

もちろん、事件がおきたところは、比奈子が勤務する八王子西署の管内ではないのですが、前巻までに起きた事件で、猟奇犯罪ホイホイとして有名になりつつある比奈子の属する「厚島班」へと法医学者の石上教授の後輩の警視庁の田中管理官から仕事が振られてきた、というわけですね。

そして、これらの事件が厚田班に持ち込まれ、いつものように石上教授の指示で中島保の収容されている日本精神・神経医療研究センターの分析結果で、比奈子の故郷・長野の鬼無里地区にある白髭神社でおきた、乳幼児の顔の皮を剥いだものが賽銭箱に押し込められていた事件との関連性がでてきます。

そして、この被害者となった乳幼児の身元が判明し、捜査本部のほうは臓器売買組織が絡んでいるという方向で捜査を進めるのですが、プロファイラー「中島保」は、被虐待児童を保護するNPOを運営していて、児童のキャンプなどで鬼無里地区を使っていて、東京と長野のどちらにも土地勘がある、法人の理事長に目を向けるようアドバイスします。

それを受け、比奈子が法人の理事長の自宅を訪ね、その家にいた子供の案内で邸内に潜入するのですが、そこで何者かに腹部を刺され・・という展開です。

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「ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」=連続殺人鬼・佐藤都夜が比奈子へ迫る

第六弾の「ONE」の構成は

プロローグ
第一章 放たれた鬼
第二章 鈴木ひろしという男
第三章 猟奇犯罪捜査班
第四章 ZERO
エピローグ

となっていて、前巻の後半部で、刑務所を脱走した佐藤都夜も、途中、ホームレスの老人を殺して金を奪った後、主婦、女子高生を次々と殺して衣服や化粧道具を奪い、自らを変身させながら逃走を続けています。彼女は、刑務所の規則正しい生活で、以前のモデル体型に近いスリムな身体となった上に、古着や美容院で髪型も変え、逮捕時とは別人のようになっているため、捜査の目をくぐり抜けています。

そして、彼女が目指しているのは、文通相手の「鈴木ひろし」との合流で、最終目的は、「藤堂比奈子」への復讐と、彼女の皮を剥いでコレクションに加えることですね。
殺人鬼・佐藤都夜が、比奈子への怨みをつのらせながら、ヒタヒタと迫ってくる様子はなんとも怖い仕上がりになっています。

一方、比奈子のほうは、前巻で容疑者らしいNPO法人の理事長宅に潜入したところで、腹部を刺され意識を失い、厚田班や石上教授と連絡が取れない状況となっています。彼女は、地下室へ案内してくれたその家の長男・児玉永久(とわ)に八王子西署の厚田班と連絡をしてくれるよう頼むのですが、実は彼の正体は・・ということで、事件の意外な犯人に驚くと思います。

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レビュアーの一言

今回、都内で起きる事件と長野県で起きた事件との関連性を見つけたのは、日本精神・神経医療研究センターの法医昆虫学者のサ−・ジョージ。クリストファー・ツェルニーンです。母親の精神干渉を受け、母親の死体で昆虫を培養して研究を続けていた、という設定になってます。
法医学昆虫学者といえば、川瀬七緒さんの「法医学昆虫学者」シリーズのやたら元気な昆虫学者・赤堀淳子が思い浮かぶのですが、彼女とは全く違ったキャラなのですが、「昆虫学者」というイメージとしては彼のほうがぴったりくるかもしれません。

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