旧家の土蔵に遺された「花嫁」の生き人形の正体は?=内藤了「LIVE 警視庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花」

DVによって妻を殺害し、息子に重傷を負わせた犯人に精神を徹底的に痛めつける尋問を行い、勾留中に自死させた責任をとらされて、警察庁の中に新設された捜査はするが逮捕はしない特務班に左遷されたヤリ手の女性警察官・鳴瀬清香を主人公に、各地で起きる奇妙な事件の捜査を行うオカルト伝奇ミステリの第2弾が本書『内藤了「LIVE 警視庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花」(角川ホラー文庫)』です。

前巻では、山中にあるキャンプ場に近い、古くからある神社の回りでおきる連続児童行方不明事件の謎を、班長の土井とともに村へ潜入して解き明かした主人公「鳴瀬清華」だったのですが、今回は青森の山奥の一軒家から見つかった「変なもの」の調査から、若くして死んだ子供への親の妄執が生み出した謎を解き明かしていきます。

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https://takafam.com/weblog/2022/12/03/manga-oukoku-osusume-point/

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
第一章 ドングリ虫の町
第二章 燃えたマヨヒガ
第三章 笑わない花嫁たち
第四章 神月家の話
第五章 凍った婿と人形の花嫁
第六章 西陣織金彩貝螺鈿牡丹鶴文様色打掛
エピローグ

となっていて、冒頭の「プロローグ」では、自然と野生動物の撮影を趣味にしている独身の四十過ぎの男性が、宣悪のシャッターチャンスを母親からの電話の着信で逃してしまうところから始まります。彼に良い縁談がきた、という急ぐとも思えない連絡に腹を立てるのですが、気分をかえるためさらに山奥へ入って撮影スポットを探しているうち、一軒家の大きな屋敷に行き当たります。おりしも振り出した雨を避けるため、屋敷に向かった彼は、屋敷から山へとつながる細道に立つ、複数の花嫁の姿を見、怖くなって逃げだした、とシーンが描かれていて、これが謎解きのヒントにもなりますので覚えておきましょう。

本筋の事件のほうは、自宅で娘の「桃香」と昼間どんぐり拾いをし、のんびりとした休日をとっている、本シリーズの主人公・鳴瀬清花のところへ、清花の新しい勤務先である「警視庁特捜地域潜入班」の室長・土井から警察庁刑事企画課長からの要請で行く青森での現地調査に同行してほしい、との電話がはいるところから始まります。

ここに至るまでに、清花と娘・桃香とのほほえましい休日の様子が描かれているのですが、このあたりは今回の事件の伏線になっているような感じですね。

で、今回の依頼内容は、山奥の一軒家の旧家の屋敷で男性が焼身自殺したのですが、そこの蔵から「変なもの」がでてきたので調べてほしいというものなのですが、「変なもの」が何なのかは直接、現地で確かめてほしいという内容です。このあたり、妖しいにおいがプンプンする設定ですね。

全貌がつかめないまま、清花は現地の青森県上北郡のローカル駅「野辺地駅」からさらに山奥へ入ったところにある、男性が焼身自殺した屋敷へと向かいます。そこは、神月家というかつて北前船で財を成した旧家のお妾さんを住まわせていた屋敷で、焼死したのは癌を患っていたそこの老当主です。

そして、清花たちが現地に着き、土蔵の中に入るとそこで見たのは、様々場花嫁衣裳をまとった数体の等身大の花嫁人形です。その人形には眉毛や睫毛も植えこんであるうえに、産毛まであって、まるで遺棄人形のようなリアルさです。

この東北の地には若くして未婚で亡くなった故人があの世で結婚できるよう人形や絵馬を奉納する「冥婚」の風習があって、これは七十年ほど前、戦死した息子を悼んで、母親が花嫁花婿の人形を手作りして津軽のお寺に奉納したのが始まりだと言われているのですが、これと何か関連があるのでしょうか・・といった筋立てです。

この人形の正体を酢らべようと大学の研究室の設備まで使うことになるのですが、なんと、その人形の皮膚は「人間」のものであることや、おそらく内部には人骨もあることがわかってきます。人形の花嫁衣装は文金高島田や、綿帽子からウエディングドレスまでまちまちなので、ひょっとすると時代時代で、誘拐された人体や盗まれた死体が使われたのではと疑惑が広がっていきます。

そして、清花たちは、この花嫁人形が見つかった土蔵の地下に「手術室」のような設備があることをみつけ、この旧家の裏の姿に気づいていくのですが・・といった展開です。

この後、焼死した旧家の老当主の世話をしていた夫婦の隠された過去や、若死にした息子を冷凍保存している夫婦の話が絡まって謎が明らかになっていくのですが、詳細は原書のほうで。

レビュアーの一言

今巻の謎解きのヒントになるのが「冥婚」という風習なのですが、現在でも中国や台湾の一部では行われているという情報があります。

中国の山西省では、2017年に若くして事故死した息子のために冥婚をあげた両親がいたようですが、冥婚用の花嫁の遺体が「18万元(約300万円)」したとか。なんか「死体売買」みたいなグロテスクなところもあるのですが、花嫁の実家にとっても、未婚の内に女性が死亡すると一族の墓にはいれられず、近くの田畑のそばに埋葬するしかないのですが、冥婚をすれば、お婿さんと合葬して、そちらの一族の一員として墓碑銘にも刻むことができるというメリットがあるそうです。

このほか、結構信じられている「算明」という占いがあるのですが、結婚前にこれで、「新郎には妻が二人いる運命にある」とでたら、現実の結婚の前に新郎が「冥婚」をあげて、将来の「離婚」の可能性をつぶしておく、なんていうこともあるようです。

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