内藤了「BACK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」=秘密の警察病院を襲った病院テロの謎をとけ

八王子西署の刑事組織犯罪対策課に勤務する、長野県出身で、八幡磯五郎製の七味唐辛子を常用する女性警官・藤堂比奈子が、ベテラン刑事の「ガンさん」こと厚田巌夫、東大法医学部の教授で「死神」と異名をとる石上妙子、鑑識課のオタク鑑識官・三木健、同僚のKY警察官・東海林恭久、バイク乗りのイケメン刑事・倉島とともに、都内でおきる奇妙で凄惨な死亡事件の謎に挑んでいく「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズの第七弾が本書『内藤了「BACK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(角川ホラー文庫)』です。

前二巻で、比奈子が逮捕した連続殺人鬼・佐藤都夜と文通していた彼女の信奉者・鈴木ひろしのおこす乳幼児連続殺人の捜査をしている中で、刑務所を脱獄した都夜の襲撃を受けた藤堂比奈子だったのですが、今回は、受刑者が入院している病院を襲ったテロ事件に挑みます。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
第一章 クリスマスの惨劇
第二章 眼球のない死体
第三章 人骨のペンダント
第四章 ローン・ウォリアー
第五章 マンソン住血吸虫症
エピローグ

となっていて、冒頭のところで、比奈子の恋人・中島保が収監されている「日本精神。神経医療研究センター」で、入院者の一人でサヴァン症候群の天才・金子未来と彼の描いたセンター内の人物たちの絵のことで話し合っているシーンが出てきます。今回は直接、事件とは関係なのですが、後巻で中島保を巡っての連続殺人に関係してくるエピソードなので覚えておいてくださいね。

今巻の事件のほうは、クリスマスシーズンの東京都千代田区富士見でおきます。ここにある「ベジランテボード総合病院」に何者かが忍び込み、10階に入院している患者を多数殺害するという事件がおきます。

この病院は自警会の資本の入った非公式の警察病院で、10階と11階には治療が必要な受刑者は密かに入院していたのですが、ここに睡眠導入ガスがまかれ、医療関係者が眠らされ、そのすきに患者が複数、アーミーナイフで喉をかき切られて殺害されるという事件です。

殺された受刑者の患者は、性別も罪状も年齢もバラバラで関連性は見当たらないのですが、この病棟の看護師長と事務長、看護師の行方が分からなくなっていて、看護師長は下水道の暗渠の中で、眼球を抜かれ両腕を切られた状態で、事務長のほうは青海埠頭にあるコンテナの中で全裸でパイプ椅子に縛り付けられ、拷問された上、これも手首を切られた状態で発見されます。

さらに、この病院の理事長も海外に旅行に出たまま行方不明になっていることもわかり、この三人がこの病院テロ事件に関連しているのでは、と思われる中、SNSで受刑者たちがテロにあって殺されたことを賞賛している男・渡嘉敷の存在が浮上します。彼は仕事を転々とした後、ホームレス傷害事件で強制入院させられているのですが、退院後、金回りが急によくなり、知り合いに借金を返済した時に、「秘密指令を受けた」と妙な言葉を吐いていたのですが・・という展開をしていきます。

この渡嘉敷容疑者はその後、厚田班によって身柄を確保されるのですが、逮捕直後からラリっていて、護送中に薬物中毒で急死してしまいます。

今回は一応の「事件解決」とはいえるのですが、プロの犯行と思われる看護師長、事務長の殺害を一介のウォーゲームマニアの渡嘉敷で犯行可能なのか、という疑問が拭えない中、石上教授が「ベジランテボード総合病院」に入院しているある患者の存在に気付き・・と謎を深めていく展開ですね。

Amazon.co.jp

レビュアーの一言

前巻までは猟奇犯罪ホイホイとしての能力をフルに発揮していた藤堂比奈子なのですが、今巻からは、陰謀事件を引き寄せてしまった気配が漂い始めます。その源になっているようなのが、比奈子の恋人・中島保で、脳腫瘍を人為的につくって犯罪者を強制自殺させるという、彼の「前科」が次巻以降で焦点になってきそうです。

スポンサードリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました