内藤了「MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」=湖に遺棄された人魚死体の謎を解け

八王子西署の刑事組織犯罪対策課に勤務する、長野県出身で、八幡磯五郎製の七味唐辛子を常用する女性警官・藤堂比奈子が、ベテラン刑事の「ガンさん」こと厚田巌夫、東大法医学部の教授で「死神」と異名をとる石上妙子、鑑識課のオタク鑑識官・三木健、同僚のKY警察官・御子柴秀、バイク乗りのイケメン刑事・倉島や実家がお寺で陰の薄い忍者的存在の清水、厚田班から本庁捜査一課に異動した東海林恭久とともに、都内でおきる奇妙で凄惨な死亡事件の謎に挑んでいく「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズの第八弾が本書『内藤了「MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(角川ホラー文庫)』です。

前巻で、秘密の警察病院が襲撃されて入院していた受刑者が多数殺された事件で、覚せい剤中毒の犯人を逮捕した比奈子たち厚田班だったのですが、今回は、人魚の姿をした奇怪な死体の捜索に挑みます。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
第一章 新生厚田班の憂鬱
第二章 侵された人魚
第三章 図書室の鍵師
第四章 ハーピーと爬虫類
第五章 人造人魚とカリフラワー
第六章 MIX
エピローグ

となっていて、いままでKYな態度で比奈子を悩ませていた先輩刑事の東海林がなんと警視庁の捜査一課に抜擢され、八王子西署を去っています。この後、後任として異動してきたのが、第三巻の「AID」で、交番勤務中にスマホに夢中になって捜査陣の不興をかった新米警察官・御子柴です。その時は、先輩警察官の原田の指導も効果が薄かったのですが、今回は、強制的な石上教授の検死の立会などぬくぬくとしている状態ではなさそうです。

事件のほうは、所沢市の狭山湖でアマチュアの野鳥カメラマンが発見した「人魚」の死体が発見されてことから始まります。その死体は上半身が少女で下半身が魚という姿で、全身が癌に侵されて死亡したようなのですが、耳の裏側には鰓のようなものもあり、さらに人間の姿の上半身と魚の姿の下半身の過ぎ目は自然で、血管や背骨が境目なくつながっている、という異様な姿です。

通常、こんな時は江戸時代の見世物小屋の作り物を想像してしまうのですが、今巻の場合は、身体を人為的に改造したとしか思えないような精巧なつくりになっています。

このため、石上教授は、中島保が収容されている「日本精神。神経医療研究センター」のバイオテクノロジーによって作り出されたものではないか、と言う疑いを抱き、センターへ人魚の検体を持ち込みます。

そのセンターで、図書館の管理人をしている元腕利きの金庫破り「鍵師」から奇形種を使ってキメラをつくる論文の存在を教えてもらいますのですが、そんな中、今度はセンターに持ち込んだ人魚の下半身と同じような皮膚をし子どものホルマリン漬けの下半身が発見されて・・という展開です。

そして、この二つの死体の身元を明らかにするため、比奈子たち厚田班のメンバーは、センターの「鍵師」に教えられた論文を執筆した研究者「我孫子」と、彼の恩師の医者が「カシマ・ギネコロジカル」という内科から心療内科、産婦人科、小児科まで診療する大きな個人病院で急死していることをつきとめます。

この病院の産婦人科で、妊娠後期の流産が丘に比べて異常に多いことに不審を抱きさらに調査をすると、この病院の理事長が、前巻で患者襲撃事件のあった「ベジランテボード病院」の理事長と同一人物であることがわかり、さらに我孫子がこの病院で秘密研究をしていたらしい疑いがでてきて・・といった展開です。

この後、入院患者を全て転院させ、実質的に廃院状態になっている「カシマ・ギネコロジカル」に潜入する、比奈子たち厚田班が。今回の「人魚事件」を首謀者の「我孫子」を確保しようとして、まんまと「我孫子」の研究を支援していた黒幕勢力の刺客とのバトルシーンが展開されるので、そこは原書のほうでお楽しみくださいね。

Bitly

レビュアーの一言

今巻の遺棄された人魚に始まる、キメラ事件は中島保の収容されている医療県有センターの外で展開されるのですが、センターの中でも、永久と仲良くなった金子未来というサヴァン症の天才青年が、センター内に「影人間」と呼ぶセンターの職員ではない複数の人物がいることと、内部の研究室内で溶液に浸されて保管されている、「Tsuya Satoh」のものだとラベリングされた「脳みそ」の存在に気付きます。この二つが、次巻以降、猟奇犯罪を超えた大きな陰謀事件へとつながっていきます。

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