あかねはフロイトの父母を殺した「悪夢」と対決する=内藤了「夢探偵フロイト ナイトメア殺人実験」

埼玉県所沢市に所在する総合大学「私立未来世紀大学」の「幽霊森」といわれる学生も教員の近寄らない学内のはずれにある「夢」を可視化することを研究している「夢科学研究所」を舞台に、そこの主任教授の「フロイト」、工学専攻のオタク大学院生「ヲタ森」、卒業が危うい不器用なパリピ女子大生「あかね」が、夢に関連しておこる怪事件の謎を解いていく「夢探偵フロイト」シリーズの第5弾にして最終巻が本書『内藤了「夢探偵フロイト ナイトメア殺人実験」(小学館文庫)』です。

前巻までで、夢に起因する怪事件を解決してきた「フロイト」「ヲタ森」「あかね」だったのですが、今までの事件で知り合った元「夢売り」の姫香、スポンサー企業「塚田善左衛門商店」のお嬢さま・翠も夢科学研究所の準メンバーとして加わってきたのですが、いよいよ、フロイトの夢研究の動機となった両親を悪夢で殺した犯人と対決するのが本巻です。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
1 幽霊森の訪問者たち
2 人を殺す悪夢
3 フィールドワーク
4 フロイトが悪夢に感染する
5 幽霊森の幽霊に会う
6 ナイトメアの殺人実験
エピローグ

となっていて、冒頭のところでは、卒業をひかえた「あかね」がエントリーした覚えもないのに内定をだしてくれた会社の内定者説明会へ向かう様子が描かれています。高級ホテルで豪華な食事を出し、5年間で1千万円の貯金ができるというのがうたい文句の会社らしいのですが、いかにも怪しげなところに気づいていないのが「ペコ」こと「あかね」らしいところです。また、ヲタ森のほうは、学長の菜園から得たビッグデータをもとにつくったバーチャル植物の育成ソフトが注目され、大手IT企業から誘いがかかっています。それぞれに卒業の4月が近づいている気配が濃厚になっているところですね。

事件のほうは、介護福祉施設の原因不明の感染がおき、心臓麻痺で複数人が死んだのだが、死んだ者全員が悪夢による不眠を訴えていた、ということで夢科学研究所へ相談がきたことから始まります。死んだのは、老人だけではなく、二十代の健康な男性介護士も亡くなったということで、いかにも「悪夢」がなにかの引き金になっているのは間違いないようです。

で、介護施設の調査に入った、フロイトとあかねは、そこで眠いのに、眠ろうとすると心臓が変調をきたしはじめるとともに、なにか怖い夢をみて起きてしまう、と訴える生活相談員の相談を受けます。彼女は、心臓まひで死亡した介護士から「なってみたらわかりますよ」という言葉をかけられ、彼が死んでからこういう症状がでたと訴えます。さらに、死んだ介護士は同じく心臓麻痺で死亡した入所者から「次はおまえの番だ」と不吉な予言をされたことも。

フロイトたちは、その相談員の状態を調べるため、催眠術をかけて、悪夢の様子を聞き出そうとするですが、突然、その相談員の形相がかわり、フロイトに向かって「次はオマエの番だ!」との呪いの言葉を吐きます。この時から、今度はフロイトが、悪夢と不眠症に悩まさせることになり、どんどん衰弱していきます。

そこで、その原因をさぐるため、夢科学研究所で自作した、夢を可視化する機械をつかってみると、スラブ系の女性の顔の画像が浮かび上がります。さらに、その画像はロシア語で「見つけたぞ、おまえだな」と言っていて・・という展開です。

この後、幽霊森にでるフロイトの祖父にあかねが夢であって事件の謎を解くヒントを夢で教えてもらったり、とソフト・オカルトっぽく物語が進んでくのですが、最後の「悪夢」の本体との対決は夢の中でのアクションシーンが繰り広げられていきますので、詳細は原書のほうで確認してくださいな。

夢探偵フロイト -ナイトメアの殺人実験- (小学館文庫)
両親を殺した悪夢に挑む、シリーズ完結編! やっとのことで就職が内定したあかね...

レビュアーの一言

夢探偵フロイト・シリーズの最終巻ということで、今まで、幽霊森の中にある研究所から、関係者が巣立って行くラストシーンを想定していたのですが、残念ながら当方の予想は外れてしまいました。ただ、ブラック企業への就職がほぼ決まりかけていた「あかね」が土壇場で逃れ、新しいポジションを獲得したのは目出たいことです。

今後、フロイトを主人公にしたシリーズは完結しても、「あかね」を主人公にした新シリーズがでてくると嬉しいですね。

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