灰原薬「応天の門」15=道真は不老不死の薬と藤原氏の暗い陰謀に出会う

宇多天皇・醍醐天皇に寵愛されて政治の権を握ったのだが、藤原一門との政争に破れて太宰府に左遷され、死後、祟り神となって時の権力者である藤原時平ほか藤原四兄弟をとり殺したとされる「学問の神様」菅原道真と、平安時代きってのプレイボーイとして有名な在原業平の二人の活躍を描く「応天の門」シリーズの第15弾。

今巻では、前巻で藤原良房が重病で床に就いたという噂が流れ、彼の病気平癒のために多くの貴族・官人たちが動き回る中、不老不死の薬を巡っての騒動が描かれるとともに、藤原氏が権力を確立した20年前の事件が再び蘇ってきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

第七十八話 典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事 一
第七十九話 典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事 二
第八十話  典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事 三
第八十一話 源融、嵯峨に庭を望むこと
第八十二話 流人の隠岐より帰京すること 一
第八十三話 流人の隠岐より帰京すること 二

となっていて、藤原良房の重病説の流れる中、宮中の医療を司る「典薬寮」の前の長官で、今は摂津山中で隠遁生活をおくっている出雲峯嗣から、典薬寮の医官・興道名継に「仙薬」と称する薬が届きます。

この薬が良薬か毒薬か確かめるため、道真の実家の所蔵図書を融通してほしいという依頼が、道真の師である「島田忠臣」にやってきます。典薬寮には藤原一族の監視の目がはりめぐらしてあって、「不老不死」の仙薬が見つかったとなれば、大きな騒動になることを警戒したということなのですが、すでにこの時期、藤原一族も、南家、北家、京家、式家と別れて権力闘争を繰り広げているときですので、藤原氏内部の抗争に巻き込まれるのを怖れた、ということでもあります。

島田忠臣は道真の父から書物を借りて典薬寮の名継に届けるのですが、道真と(紀)長谷雄が、父が渡し忘れた書物を届けに来て典薬寮に潜入し、さらにはそれを見つけた道真の許嫁で、忠臣の娘・宣来子もあとをつけてきたせいで、ドタバタの騒ぎが起きることとなります。

読みどころは、宣来子が出会う女医の話と、長谷雄の祖父が意外にも湯集な「医官」であったあたりでしょうか。

巻の後半では、源融の所有する「嵯峨の別邸」の菖蒲の花がすべて切り落とされていて、源融がその犯人と疑う、隣の嵯峨院に住まう「恒貞親王」、今は出家して「恒寂」という僧になっている人物の犯行の証拠を見つけてほしい、と業平が嵯峨までよびよせられることから話が始まります。

こういう「推理ネタ」には業平は道真を無理やり同行させるのがいつものことで、ここから二十年前に謀反の疑いをかけられ、中央政界から失脚した恒貞親王との関わりができることとなります。

ただ、菖蒲の花を切ったのが源融へのいやがらせととったのは誤解で、恒貞親王の園芸知識からの「好意」であったことが話中で明らかになります。(源融の家人たちが、ニラと間違えて菖蒲の葉を食べて腹をこわすというおまけつきではありますが)

もっとも、話の本筋はここからで、二十年前に恒貞親王の謀反に加担したとして隠岐へ流罪となった人物が赦免され、京へ帰ってくるという噂が流れたことから、藤原一族の暗躍が始まり、一大政争がもちあがることとなります。この場面での道真の行動が後の藤原氏との対立を象徴しているように感じます。

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レビュアーの一言

本書の後半では、嵯峨帝の末期から淳和帝、仁明帝の時代にかけて、権力を握っていった藤原良房に代表される藤原一族の陰謀の一端が描かれています。
藤原氏が権力を握っていった軌跡が、陰謀に陰謀を重ね、他氏族を陥れていった末にかちえた「暗い軌跡」であったことがうかがえます。

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