「鬼門の将軍 平将門」=平将門の怨霊伝説は明治政府のでっち上げ?

東京の大学の理科系学部を卒業後、医薬品関係出版社「ファーマ・メディカ」が発行している医療系月刊誌の編集者をしている「萬願寺響子」が、周囲の知り合いが関わっていく歴史に由来する事件に巻き込まれ、知らずしらずに自身は苦手にする「歴史の謎」の解明をしていく歴史ミステリー「萬願寺響子」シリーズの第一弾が本書『高田崇史「鬼門の将軍 平将門」(新潮文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
多事多難
一触即発
落花流水
満身創痍
山紫水明
侃々諤々
同床異夢
エピローグ

となっていて、まず第一の事件は、京都の貴船で起こります。ここで民宿を経営していた深河亜希子という女性が、首を吊った状態で発見されるのですが、その心臓めがけて十寸釘が打ち付けられ、首をつった樹木に固定されているという猟奇殺人事件です。その死体をみた被害者の母親はショックを受けて失神する間際に「まさか・・ど・・」と言う言葉を残したまま意識不明となります。この言葉が当然、事件の謎解きのキーワードなので覚えておきましょうね。

さらに、つづけざまに第二の事件がおきます。今度は宇治川の橋に首無しの男性死体が引っかかっているのが発見されるのですが、この死体は一体誰、という筋立てです。

一方、本シリーズの語り部となる「萬願寺響子」のほうでも事件が発生します。外回り先の大手町で、将門塚の一部が壊され、そこに男性の首が転がっているのが発見されます。

ここから、響子は、従弟の「鳴上漣」の知識を借りながら、日本きっての怨霊である「将門」の謎を調べ始めていく、というストーリーです。

この首は第一の事件で樹木に磔にされた深河亜希子の兄・悟のものとわかるので、宇治川で発見された首なし死体も彼のものでは、と推理されるのですが、これはフェイク。まあ考えてみれば、首か胴体をもって東京~京都間を移動するなんてのは普通の犯罪者なら考えないところなのですが、ミステリーだとひょっとしてと思ってしまいますね。

で、この「ひょっとして」というのは、将門塚で生首が発見されたり、貴船で殺人がおきたり、というところから、将門塚が祀られた経緯や、この塚を破壊しようとした明治政府の高官に災いがおきた、といたことから、この生首事件も「将門の怨霊」に関係しているのでは、と推理がリードされていくあたりに作者の仕掛けた罠が隠れていますので、ご用心ください。

ちなみに本書によると、将門の怨霊話も、明治政府=藤原一族の「江戸幕府」=将門=菅原道真というベクトルとの対立から生まれたもので、「将門」を祀る神田明神とか成田神社への明治政府の嫌がらせも記述されています。さらに、実は昔は「将門」は日本を代表する怨霊なんかではなかったといったことにもなってきていてるので、これが本当なら多くの「伝奇もの」や「怪奇もの」が影響をうけるかもしれませんね。

そして、事件のほうは、宇治川で発見された死体が、貴船で殺された女性の元夫であることわかり、二人の離婚の原因となった女性の息子の口から、殺された二人の「旧悪」が明かされることとなり・・といった展開をしていきます。

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レビュアーの一言

萬願寺響子シリーズで、歴史事実の先導役を務める「鳴上漣」くんはペットとして「ヨリトモ」という名前のオカヤドカリを飼っていて、物語の途中でも「グェッ」と奇声をあげて物語にアクセントを加えています。

オカヤドカリは台湾以南の熱帯地域に広く分布するヤドカリで、日本では小笠原諸島と南西諸島に生息しています。雑食なので基本的には果物、野菜など何でも食べ、一説にはポップコーンが好みという話も。温度管理と湿度管理に気をつけて飼育すれば、10年以上長生きするヤドカリなのですが、天然記念物に指定されているので、飼うには専門の業者の方に相談したほうがよいかと思います、くれぐれも自主採取はしないようにね。

オカヤドカリの飼育については「TOKYO AQUA GARDEN」さんの「オカヤドカリの飼育方法!寿命や値段、種類やエサ、水槽も紹介!」が詳しいですよ。

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