乳児誘拐犯としてネットに晒された集団自殺志願の四人がみつけた犯罪は?=川瀬七緒「四日間家族」

自殺をするためにネットで集まった四人の男女が、自殺場所として選んだ東京都の青梅の山中で、置き去りにされた赤ん坊を拾ってしまったことから、誘拐犯とされ、ネット民によってプライベート情報を全世界にさらされながら、置き去り事件の真相を暴き出していく、クライム・ミステリーが本書『川瀬七緒「四日間家族」(角川書店)』です。

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あらすじと注目ポイント

構成は

第一章 最悪への扉
第二章 見捨てるか、助けるか
第三章 無垢と悪
第四章 疑似家族
第五章 わたちしたちの四日間

となっていて、物語は東京都の青梅の岩國山の山中、ネットを通じて知り合った四人の男女が、窓に赤いテープで目張りされた廃車寸前のハイエースの中に身を寄せ合っているところから始まります。集まっているのは今巻の主人公の28歳の女性「坂崎夏美」、江戸川区の一之江でちっぽけな安スナックを経営している70歳過ぎの「寺内千代子」、鎌田で小さな鉄工所を経営していた還暦になったばっかりの「長谷部康夫」、千葉の習志野の出身で、家族全員が陸上自衛隊の幹部で自らもボースカウトの高位者の高校生「丹波陸斗」というメンバーです。

ただ、この誰もがいわくつきの人物ばかりで、寺内は新型コロナの自粛期間中に、闇で営業して、来店した近所のなじみ客の老人がバタバタと感染して死んで、家族に賠償を請求された上にネットで叩かれて老女ですし、長谷部は人が好過ぎるせいで工場の経営が大赤字となり、借金の保証人となっている妹に保険金を残そうと考えている人物。そして主人公の「夏美」は、日本各地の過疎地の村に入り込んで、そこに住む住民を誑し込んでは、そこのコミュニティを破壊するのが無上の楽しみで、そのせいでヤクザにカチコミをかけられている、という悪女です。

これ以上生きていてもいいことがない、と密閉した車の中で練炭自殺を企画した彼らなのですが、いざ実行となって怖気づいているところに、小太りの女の乗った赤のミニバンが山をあがってきて、その女は彼らの車のすぐ近くの山際の中に黒いリュックサックを捨てていきます。不審に思った四人がそのリュックを拾い、開けてみると中には、お腹は空かしているようではあるものの元気な男の赤ちゃんが入っていて・・という展開です。

突然の赤ん坊の出現で、四人はひとまず集団自殺を中断して、赤ん坊を警察がどこかの公的機関に押し付けようと動き始めるのですが、一旦、赤ん坊を捨てた赤のミニバンの女が再び帰ってきて赤ん坊を探し始めたり、不審な男連れの車に追跡されたり、果てはその赤ん坊の「母親」と名乗る女が、ネットで見ず知らずの四人組の男女の赤ん坊を拉致されたと訴えたものですから、夏美たち四人はネット民の恰好の標的とされ、生活状況から親族状況、さらには隠していたスキャンダルも晒されることになっていきます。

突然の赤ん坊拉致犯にされてしまった夏美たちは、赤いミニバンの女の居所を調べ上げて罠にはめ、彼女の背後にいる赤ん坊遺棄の黒幕をつきとめようとするのですが、それはもっと深い闇に足を踏み入れることで・・という展開です。

ネットでの炎上や晒しの波をかいくぐりながら、遺棄事件の実行犯である「赤いバン」の女・加藤まどかを使いながら、黒幕に迫っていく夏美たち四人の活躍と、最初は偶然集まった関係に過ぎなかった四人が「チーム」になっていく姿はちょっと感動的です。

レビュアーの一言

四人のメンバーのうち、常に冷静でシニカルな雰囲気を崩さない高校生の「陸斗」は、作中でボーイスカウト日本連盟の「富士章」を獲得していることをポロっとしゃべるのですが、この富士章(現在は富士スカウト章というらしいですが)、高校生年代のスカウトが獲得できる栄誉の最高峰らしいです。

この富士章を獲得するには

・隼スカウトで6ヶ月間「ちかい」と「おきて」で最善を尽くす。
・自己の成長と社会に役立つためのプロジェクトを設定し、少なくとも1ヶ月以上に渡って実施、報告する。
・ハイキング章、スカウトソング章、野営章、野外炊事章、リーダーシップ章、救急章、パイオニアリング章、野営管理章、公民章を含む 15個の技能賞を取得。
・宗教章を取得もしくは信仰に近づくための奉仕活動を実践する。

といった条件をクリアする必要があるとのことで、管理人はボーイスカウトの世界は門外漢なので詳しは解説できないのですが、なんともすごい努力と精進が必要そうな感じですね。

ちなみに、海外のボーイスカウトにも、イギリス連邦では「クイーンズスカウト章」(今は男性のチャールズ3世なので、「キングスカウト章」になっているかも)、アメリカでは「イーグルスカウト章」といったこの富士章に匹敵するものがあるようで、「イーグルスカウト章」受章者は大統領晩餐会にも呼ばれるほど栄誉のあるものらしいです。

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