内藤了「TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平」=八重洲の転落死者は、連続女性失踪の関係者?

信州の山間の村から東京へ上京し、警視庁に就職した「東京駅」大好きの、新米女性警察官・堀北恵平(通称「ケッペー」)が、東京駅近くの丸の内西署で研修中に遭遇する怪奇事件の謎を、50年以上前の「うら交番」の警察官のアドバイスを受けながら解いていく「東京駅おもてうら交番」シリーズの第7弾が『内藤了「TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平」(角川ホラー文庫)』です。

前巻では、東京駅前で起きた、何者かに憑かれたような連続無差別殺傷事件に遭遇し、さらに、新興宗教がらみの内臓摘出事件の犯人をつきとめた恵平だったのですが、今巻では、前巻までにでてきた「ターンボックス」に関連した墜落事件の謎に挑みながら、段々と期限の迫ってきている「うら交番」の謎に迫っていきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
第一章 恵平の里帰り
第二章 資料課から来た老捜査官
第三章 死者の狼藉
第四章 レクリエーション・ルーム
第五章 東京駅うら交番
エピローグ

となっていて、冒頭「プロローグ」での昭和30年代の「東京」のほうでは、交番勤務となっている当時の柏村が、後輩刑事の永田の行方不明事件を追っているところから始まります。永田が人格を豹変させるきっかけになった、少年バラバラ殺人の犯人にも会うのですが手がかりもないまま推移するなか、とうとう、永田が若手警察官と子供を殺した現場である中野駅ちかくの農機具置き場に行き着きます。そこで、血の染みついた地面を発見し、証拠採取をするのですが、帰路、札付きのカストリ雑誌記者であった明野がミンチ状になって死んでいるのが発見され、というところで、昭和30年代の事件は次巻へ続きます。

現代のほうでは、恵平が久々に里帰りして、故郷の長野の実家で過している場面が描かれます。ここに、鑑識の桃田から昭和34年の若手刑事の失踪事件とカストリ雑誌編集者の変死事件の新聞記事のコピーが届き、過去と現代とが繋がり始めます。

で、今回の事件は東京駅の八重洲のビルの階段の隙間に、40代ぐらいの男性が転落死て死亡していたという事件です。

死んだ男性・高橋祐介の実家は岡山県の金持ちで、この男性も死んだ時は現金で200万円を持っていて、大手町に事務所を構えて株のトレーダーと称していたのですが実家の財産をたよりに贅沢な暮らしをおくっていたようです。

この事件の捜査が開始される頃、鑑識の桃田が東京駅うら交番の柏村から提供された毛髪と爪のDNA結果を警視庁の未解決事件ファイルと照合したことをきっかけに、元警視庁の捜査一課OBで、科学警察研究所に籍を置いている「浦野」という人物が訪ねてきます。

彼は捜査一課時代に未解決となってしまった大久保でおきた不法滞在外国人女性の失踪事件をはじめ5件の失踪事件の捜査を独自に進めているのですが、それらの失踪女性のDNAでは、と思ったわけですね。

残念ながら、桃田の照合したものとは時代的にあわないので、それとの関連は否定されたのですが、浦野元刑事の調べていた失踪事件で、関わっていたと思われる男が吸っていた煙草が外国製の特別なもので、今回、転落死した男が吸っていたと思われるものを酷似していて・・と展開していきます。

そして、この八重洲で死んだ男性のDNAと浦野元刑事が保管していた外国煙草とのDNA艦艇も進められることになるのですが、これだけでは決め手に欠けると思ったのか、恵平のバディともいうべき平野は、高橋の父親が所有する那須高原の山林へと調査に出向きます。そこで、山道を登ったところに放置されるように置いてある黒いコンテナとそばに高橋が吸っていた高級外国煙草の吸殻を見つけ、コンテナを開けようとすると、風向きの加減である「臭い」が恵平たちのところへ漂ってきて・・と物語が展開していきます。

高級外国煙草から、五人の女性の失踪事件までつなげていくところはちょっと強引さもあるのですが、明治時代から存在したといわれる、人を跡形もなく消し去る「匣」と呼ばれる存在や、ホームレスや女子高生の堕胎事件に絡んだ「ターンボックス」などホラー風味を利かせながらのストーリー展開は見事です。

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レビュアーの一言

今巻では、恵平が仲良くしている、老舗和菓子屋の女将で亡くなった先夫に会うために東京駅の地下街でホームレスをしているメリーさんに、その亡くなった旦那さんが会いに来ている場面を、恵平たちが目撃するのですが、人が死ぬ数週間前から数時間前に、その人と親しかった亡くなった家族などを見る「お迎え現象」は、世界的にも報告例が多数あるようです。

これは死を間近西て、今まで知覚できなかったものが見えるようになるのでは、という説もあるようですが、「東京駅うら交番伝説」のとおり、恵平たちが「あの世」へ近づいているせいではないのを祈りたいところです。

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