「推し」に降りかかる事件の謎を女子高生探偵が解き明かす=辻堂ゆめ「追掛日菜子」シリーズ

学校の成績は中くらいより少し下、上がり症で人前に出るのは苦手ながら、よく見るととても可愛い美少女・追掛日菜子の「推し」の応援。俳優からお相撲さん、政治家から友達のお父さんまで射程範囲の広い彼女は、一旦好きになった「推し」の応援と情報収集に全録をあげて取り組むのですが、どういうわけかいつも、その「推し」は不幸な事件に巻き込まれて、という美少女女子高生ミステリーがこの『辻堂ゆめ「追掛日菜子」』シリーズです。

第一巻の紹介文によると

好きになった相手は、殺人容疑をかけられたり脅迫されたり、と毎回事件に巻き込まれてしまう。今こそ、日菜子の本領発揮!次々と事件解決の糸口を見つけ出すが・・。前代未聞、法律ギリギリアウト(?)の女子高生探偵、降臨

ということで、フツーの女子高生の明るいストーキングっぽい謎解きが展開されていきます。

シリーズのメインキャストを紹介すると、主人公は、「追掛日菜子」という上がり症で人前に出るのが苦手な、可愛いめの女子高生。彼女はできるだけ目立たないことを心がけているのですが、好きになった「推し」に関しては、全精力をかけて応援する、という秘密をもっています。ただ、そのレベルと言うのが尋常ではなくで、「推し」の出るイベントには全出席するのは当然として、グッズの買い集め、さらには、ネット検索の技術を活かして、「推し」のプライベート情報も調べ上げ、という様子で、かなり「アブナイ」レベルです。

この日菜子の「推し」活動に巻き込まれているのが兄の翔平で、彼はまだ未成年の日菜子の頼みを断り切れずに、運転手代わりをさせられたり、身代わりで警察の相手をしたり、とまあ、いいように使われている存在です。おまけに、妹と共用している自宅に部屋の壁には、妹の「推し」の社員やポスターが一面に貼られていて、自分もその「推し」に囲まれてる生活を許容しているのですから、翔平の「妹好き」も相当なものです。

今日も「推し」の活動をトレースし、その全てを知ろうとする日菜子なのですが、決まって「推し」が事件に巻き込まれることとなって・・という筋立てです。

あらすじと注目ポイント

「片想い探偵 追掛日菜子」のあらすじ

シリーズの第一作目の『辻堂ゆめ「片想い探偵 追掛日菜子」(幻冬舎文庫)』の構成は

第一話 舞台俳優に恋をした
第二話 お相撲さんに恋をした
第三話 天才子役に恋をした
第四話 覆面漫画家に恋をした
第五話 総理大臣に恋をした

となっていて、今巻で、日菜子の「推し」となるのは、殺人容疑で逮捕された舞台俳優、不倫スキャンダルを起こした若手相撲取り、ストーカーに運動会で狙われた天才子役、奥さんに逃げられて絶筆を宣言した覆面漫画家、元法務大臣の娘を誘拐し脅迫した疑惑のもちあがった現職総理大臣、といったところです。

とりわけ注目したいのは第三話の天才子役で、ストーカーとしてこの子役をつけねらい、最後は運動会で手製爆弾をしかけてきた犯人の意外な正体と、ストーカーの存在を母親から知らされて、巧みのその罠から逃れるとともに、自分の魅力をしっかりアピールしてくる、子役の「あざとさ」ですかね。

「またもや片想い探偵 追掛日菜子」のあらすじ

シリーズ第二作目の『辻堂ゆめ「またもや片想い探偵 追掛日菜子」(幻冬舎文庫)』の構成は

第一話 特撮俳優に恋をした
第二話 お巡りさんに恋をした
第三話 クイズ王に恋をした
第四話 友達のパパに恋をした
第五話 人間国宝に恋をした

となっていて、前巻に比べて、「推し」の対象が身近になってきているのが特徴ですね。

今回は、仲の良かった二人の警察官に間に生じてしまった「わだかまり」が原因の犯罪を暴いてしまったり、人気のクイズ王の傲慢な「素顔」を見てしまったり、と日菜子の謎解きがブーメランにようにかえってきて彼女を傷つける結果となるものがでてきています。

日菜子の「推し」活動は、全編にわたって熱烈ではあるのですが、短期間に終わっているのは、こういう「推し」の本当の姿を見て、憧れとのギャップの大きさに耐えきれなくなるのが理由のようですね。

今巻では、強盗疑惑をかけられたスーツアクター、頭部を薄路から殴られて昏倒した若手警察官、TV局からのクイズ問題の事前リーク疑惑のおきた有名大在学中のクイズ王、食レポの有名ブロガーにいちゃもんをつけられ経営危機となった中華店、弟子の作品の盗用疑惑のおきた人間国宝の陶芸家といった、多士済々な「推し」たちにふりかかった災難を、日菜子かその推理と調査力で解決していきます。

レビュアーの一言

日菜子の「推し」の身辺調査のほうほうが、有名人の場合は、キーワード検索でひっかかったブログやSNSを隅から隅まで目を通し、さらにはイメージ検索を使って類似画像を洗い出して情報を探っていくという手法をはじめ、ネットを多用したやり方なので、イマドキの女子高生らしいですね。

作中には時折、ちょっと踏み外しているな、と思われるシーンもでてくるのですが、フィクションということで、女子高生探偵のコミカルな謎解きを楽しむことにしましょう。

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