婚期を逸した平安時代の働きウーマン、後宮の謎に挑む=小田菜摘「平安あやとき草紙 その姫、後宮にて天職を知る」

平安時代を舞台に、婚期を逸して、当時としてはすでに大年増となる32歳になるまで実家に籠もっていた左大臣家の女性が、突如、若い帝から宮中に呼び出され、後宮の女官たちを統括する「尚侍」として仕えることとなり、帝からの熱いラブコールをかわしながら、後宮でおきる揉め事や事件の数々を解決していく、平安時代のコージーミステリー・シリーズのスタート巻が本書『小田菜摘「平安あやとき草紙 その姫、後宮にて天職を知る」(集英社オレンジ文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

第一話 花の色はうつってしまったけれど
第二話 悪くはないが、もう少し考えてみよう
第三話 ないものを求めてもしかたがない
第四話 人それぞれ思うことはちがう
第五話 言ってはいけないことと言わなくてはいけないこと

となっているのですが、物語の設定的なところを解説しておくと、主人公となる藤原伊子は、左大臣・藤原顕充の娘で、若い頃、東宮へ入内する話もあったのですが、父の顕充が先帝の怒りをかって官位降格までは免れたものの窓際状態に追いやられたため、入内話はボツとなり、東宮も若死にしたため、婚期を逸して実家暮らしという設定です。

当時としては「年増」の範疇に入る30歳すぎとなったため、このまま実家の家計の采配をしながら一生をおくるものと考えていたのですが、突如、若死にした東宮の息子で現帝から「妃」として入内するよう話がきて・・という流れです。

現帝は十六歳なので、当時の感覚としては相当の「熟女好き」には間違いないのですが、伊子としてはこの要請を断ろうとするのですが、諦めきれない帝によって「妃」としてではなく、後宮を取り仕切る「内侍」として出仕させられてしまいます。

まあ、当時、皇后や妃だけでなく、後宮の女官でもある「内侍」が帝の愛妃となることは珍しくなかったようですから、熟女好きの帝としては、出仕させて後宮入りさせておけばこっちのもの、といった感覚だったのかもしれません。

さて、出仕した「伊子」のほうは、すでに現帝のもとへ妃として入内していた右大臣家のわがままお嬢様な藤壺女御「藤原桐子」からの猛烈なライバル憎しの行動にさらされたり、かつて恋仲であった皇族・式部卿宮と再会したり、「美福門」と名乗る人物から怪しい脅迫っぽい手紙が届いたり、とトラブルの種は絶えません。

さらには、伊子が与えられた局近くの廊下に、鳥の糞が撒き散らされていたり、登花殿と呼ばれている殿舎に、帝の」寵愛が薄れたため帝を恨んで死んだ妃の亡霊が出るという噂がたったりといった怪事件がおきてきます。おまけに、亡き東宮の残した遺言に秘められた恋愛物語が隠されていることもわかってきて・・と後宮でおきる怪事件・難事件へ、伊子の推理が働いていきます。

平安あや解き草紙 ~その姫、後宮にて天職を知る~ (集英社オレンジ文庫)
ある事情により婚期を逃し、実家の左大臣家に居座っている藤原伊子。だが突然、&...

レビュアーの一言

小田菜摘さんの平安ものミステリーは、現代風の趣を持ちながら、平安調が色濃く感じられることで有名なのですが、時代的にどのあたりを底ネタにしているのかがいつも興味のあるところです。

今回は最後半のあたりで、亡き東宮の遺言にあった「梅」を捜すあたりで、かつては南殿の桜が梅であり、

平安京に遷都したときに植えた梅が枯れてしまったので、代わりに桜を植えたということです。それが現在の左近の桜です。深草帝(仁明天皇)の時代ですから、百年以上前の話ですね

とあるのはヒントとなりそうです。

仁明天皇の在位が833年〜850年ですので、それから百年(以上)後で二十年以上在位した帝というと「一条帝」とその後を継いだ「三条」あたりかな、と推測しています。今巻の主人公・伊子の父親のモデルは、当方は「悪霊左府」として藤原道長に祟ったといわれる「藤原顕光」ではと考えているのですが、時代的にも符号してくるのではないでしょうか。

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