ダムに沈んだ廃村にさまよい込んだ少女のノスタルジックな物語=漆原友紀「水域」

動物でも、植物でもない生命体「蟲」が引き起こす不可思議な現象を追い求め、解き明かす「蟲師」ギンコの活躍を描いて、200年代はじめに爆発的流行したマンガ・シリーズ「蟲師」を描いた「漆原友紀」によるノスタルジックなタイムスリップ・ストーリーが本署『漆原友紀「水域」(アフタヌーンコミックス)』です。

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あらすじと注目ポイント

Kindle版では上下二巻構成になっていて

上巻が

第1話 遡上
第2話 水郷
第3話 細波
第4話 河童
第5話 浸水
第6話 火垂

下巻が

第7話 水合
第8話 深淵
第9話 湖底
第10話 伏流
第11話 氾濫
最終話 水天

という構成。

物語は中学校の水泳部に所属している主人公「川村千波」が夏休み中のクラブ活動でのランニング中に熱射病で倒れ、山奥の村近くにある池のほとりにいる「夢」らしきものをみるところから始まります。
その時は担任教師やクラブの友人の介抱で気がついたのですが、帰宅して風呂に入っているときに再び、そこへさまよい込んでしまい、という筋立てです。

そこで、彼女は老爺とその孫息子・スミオの暮らす家に泊めてもらうのですが、眠ると再び現在の世界へと還ってきます。その村の風情にかすかに覚えがある千波が、別居している母方の祖母に聞くと、そこは祖母が昔住んでいて、今はダムの底に沈んでしまった村によく似ていると教えられます。それ以来、千波は深い眠りにつくと、その「村」にさまよい込むようになってしまいます。

そしてこれと並行して、物語は、千波の祖母と母・和澄(カズミ)の過去に移ります。母には「澄夫」という兄がいたのですが、幼い頃に竜神の滝壺で行方知れずになっています。

そして数年後、成長して小学生となった和澄は、滝の近くの淵で、「澄夫」と名乗る男の子と出会います。ちょうどその頃、村ではダムの建設計画が進んでいて、村のほとんどがダムの底に沈むこととなり、村人の多くが移転を始めています。そして、和澄の家族も・・というのが上巻まで。

下巻の最初話の「水合」は、連日の晴天続きで、水不足となりダムの底にあった村の廃墟が出現し始めたところから始まります。そんな折、下校していた千波は突然、雨に匂いを嗅いだと感じるや昏倒し、そのまま意識を失ってしまうのですが、実は意識のほうは、あの村のほうへと飛んでいっています。

夢の中での千波は、母親・和澄の若い頃に出会い、澄夫は生家に帰還していて、村もダム水没の前と同じようににぎやかになっているのですが、現在の世界では、千波は意識がもどらぬままです。

この原因が姿を表した「村」にあると考えた祖母と母親は、ダム湖に沈んでいた村の廃墟に向かい、かつての「竜神」の淵で「スミオ」に祈るのですが・・という展開です。

そして、最終盤では、「夢」の世界から「スミオ」の大事にしていたリュ竜神の玉をもってきてしまい、それを返すため再び村を訪れた千波と彼女の祖父が再び「村」を訪れ、物語が封じられていきます。

レビュアーの一言

分類すれば最近も流行の「異世界もの」「タイムスリップもの」なのですが、「蟲師」の世界観と共通する作者独特の「ノスタルジック」な世界が展開されているのが今流行のものとの大きな違いですね。

バトルも世界の激変もなく、最終的には「予定調和」的な世界展開となっているので、ちょっと古臭いな、と感じる反面、心休まるところが多いのも確かです。心が騒がしくなっている時にオススメの物語です。

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