時代小説・歴史小説

赤神諒

四国の若武者「長宗我部信親」の清冽な生き様と壮絶な死にざま=赤神諒「友よ」

天下を狙うほどの武力と君主の才覚を有しながら、産まれた時期が遅かったり、都から遠かったりといった不利な環境ゆえ、天下統一の帰趨に関わることができなかった戦国大名には、米沢の伊達家や薩摩の島津家などがあるのですが、親子二代にわたって才覚と武略...
時代小説・歴史小説

江戸時代の「情報屋」がシーボルト事件の真相に迫る=梶よう子「噂を売る男ー藤岡屋由蔵」

江戸時代後期の文政年間。第11代将軍・徳川家斉の統治下で化政文化と呼ばれた享楽的なお町人文化が咲き誇っていた時、幕府を揺るがす大スパイ事件「シーボルト事件」が勃発します。 一般的には幕府天文方の高橋景保たちがシーボルトに伊能忠敬が作製した日...
井原忠政

浅井家の残党の若武者、信長暗殺を企む=井原忠政「姉川忠義 北近江合戦心得 一」

戦国時代を舞台にした歴史・時代小説というと、「天下布武」の旗印を掲げて駿河の今川、美濃の斎藤、越前の朝倉、甲斐の武田といった有力諸侯を攻め滅ぼし、さらには比叡山の焼き討ちや石山本願寺との戦など宗教勢力を圧迫した織田信長や、その配下の豊臣秀吉...
時代小説・歴史小説

幕末の狂乱踊りの陰に坂本龍馬の陰謀が隠れている?=谷津矢車「ええじゃないか」

江戸時代の末期、慶應3年の8月から12月にかけて、近畿、四国、東海地方でおきた、地域の神社やお寺の御札が撒かれたことをきっかけに、つながりのない民衆が集団となって「ええじゃないか」という囃子言葉を唱えながら踊り狂った社会現象「ええじゃないか...
時代小説・歴史小説

徳川最強の忍者「服部半蔵」は実はヘタレだった?=谷津矢車「しょったれ半蔵」

「忍者」といって頭に浮かんでくるのは真田幸村に仕えた「猿飛佐助」や、北条家に仕えた風魔小太郎などなどいろんな名前がでてくるのですが、実在した「忍者」といわれる人物の中で、一番有名で、出世頭といえるのは、本書の主人公「服部半蔵」ではないでしょ...
井原忠政

甲府勤番還りの旗本大家の店子はいわくつきの曲者ばかり=井原忠政「うつけ屋敷の旗本大家」

幕府の直轄領である甲斐国の甲府城に常駐し、城の守備や兵糧米の管理や武器の管理、甲府地域の統治に従事した「甲府勤番」というお役目は、出来の悪い幕臣や素行不良の旗本が命じられる役職でもあったので、当時「山流し」と呼ばれて、改易一歩手前の左遷の典...
高田郁

鉄道を舞台にした「泣かせる物語」再び=高田郁「駅の名は夜明け 軌道春秋Ⅱ」

「みをつくし料理帖」や「あきない世傳 金と銀」をはじめとした女性を主人公とした時代小説の名手である筆者による鉄道や駅を舞台にしたハートウォーミングストーリーのほぼ10年ぶりの続編が本書『高田郁「駅の名は夜明 軌道春秋Ⅱ」(双葉文庫)』です。...
時代小説・歴史小説

小栗忠順、武市半平太、幕末の敗者の実相を見逃すな=小栗さくら「余烈」

幕末から明治の初期を舞台に、西郷隆盛よ大久保利通、あるいは徳川慶喜といった「巨星」の周囲で、時代の大きな奔流に揉まれながらも命をかけて、己の信ずるものを守ったり、あるいは自ら葬らざるを得なかった男達の秘史を描いたのが本書『小栗さくら「余烈」...
時代小説・歴史小説

江戸後期の「伝説の最強棋士」の修羅の生き方=谷津矢車「宗歩の角行」

徳川幕府の11代将軍・徳川家斉から14代将軍・徳川家茂までの幕末期に、幕府からその地位を公認された将棋三家の出身ではないため「名人」にはなれなかったものの、その実力では一番であったと言われる伝説の棋士「天野宗歩」の、人格・生活は破綻者の天才...
時代小説・歴史小説

旧松前藩士の遺児は土方歳三に反乱を仕掛ける=谷津矢車「北斗の邦へ翔べ」

会津戦争や東北戦争で敗れ、榎本武揚や大鳥啓介たちと蝦夷地にわたって蝦夷共和国をつくり、明治政府とわたりあった土方歳三の戦いは、蝦夷共和国側か明治新政府側から描かれるのが通例なのですが、その二つとは全く異なる、土方歳三たちに征服された、箱館に...