くらまし屋の掟を破る依頼者に平九郎の対応は? ー 今村翔悟「秋暮れの五人 くらまし屋稼業4」(時代小説文庫)

今まで、香具師の親分から追われる子分二人、呉服屋に監禁されている娘、高尾山の山中に軟禁されている本草家、と様々な事情と様々な環境にある者を「晦まして」きた「くらまし屋」たちなのだが、今話では、くらまし屋の晦ましに条件となる「依頼は必ず面通しの上、嘘は一切申さぬこと」や「我に害をなさぬこと」といった ”くらまし屋七か条” に真っ向から逆らう依頼者が出現してくる。

ただ、この逆らう客が一般の素人が逆上したり面白半分で、というわけではなく、昔、残虐で知られた盗賊の生き残りが脅迫を受けての所業なので、「くらまし屋」としてもそう簡単にあしらうわけにはいかない、というのが今巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章
第一章 阿久多
第二章 土蔵の五人
第三章 泰平の裏にて
第四章 偽りの顔
第五章 欺瞞の嵐
終章

となっていて、まずは前巻で、本草家の阿部将翁の誘拐に失敗した初谷男吏が、牢屋敷から自分の荷物を引き払って逃亡するところが今巻の出だし。もちろん、幕府のほうも黙って彼が引き払うのを見ているわけがなく、腕利きの目付けが待ち構えているのだが、凄腕のイケメン剣士・榊惣一郎にかわって、男吏に随行する鎌鑓を使うオカマの阿久多と目付けとの闘いが最初のバトルシーンですね。
最初にこの話が出てくるので、今回のくらまし屋を騙し討ちしようという話に「虚」が関係してるのでは、と疑いを持たせてしまいますね。

話の本筋のほうは、第二章からで、芝湊町にある土蔵の一つに、「和太郎」「銀蔵」「仁吉」「小野木右近」「壱助」という名の5人の男が集められる。彼らは、今は壊滅してしまったが、残忍な盗みで有名だった盗賊団の生き残りで、それぞれ今は足を洗って別の商売をして暮らしている。その盗賊団が壊滅したのは、当時の頭が副頭ことを疑って彼を謀殺したのだが、その後、頭も不審死を遂げたのが原因であった。今回、この五人が集められたのは、その頭の隠し金1万両を探し出せ、さもないと世間に過去をバラす、と何者かが脅してきたことによるのだが、その隠し金の在り処のヒントを知っているのが、なんと「くらまし屋」だというのである。

五人は順番に、くらまし屋の平九郎とわたりをつけて、そのヒントを探り出すこととするのだが、当然、探り出した後は、平九郎を生かしておくつもりもなくて・・・、といった展開で、寄木細工職人の和太郎こと蛇吉、市川雷蔵の弟子となった銀蔵、骨董商となった仁吉、というくじを引いた順番で「くらまし屋」に接触していく、といった筋立て。
それぞれが自分の趣向を凝らして、くらまし屋を騙そうと仕組んでくるので、それに平九郎がどう対応し、始末をつけたか、ってなところが今巻の読みどころですね。

この五人に依頼をしてくる人物の正体も意外なんであるが、それから先に、また凝った展開が隠されているので、最後まで気を許してはいけませんよ。

【レビュアーから一言】

今巻でも、「くらまし屋」シリーズと「ぼろ鳶組」シリーズとの接点は作られていて、今回は、平九郎が男の子二人、女の子一人と目黒不動の近くの五百羅漢寺で出会うシーンが用意されている。女の子の飴を譲って自分を我慢する美少年の姿に「ぼろ鳶組」読者の方はおそらくすぐ気づくのではないでしょうか、

さらに、今巻では、平九郎の捜している妻の初音に関する情報がちらっと出てきます。ネタバレ的にいうと、惣一郎が前巻の失態の引責も兼ねて行かされる、「虚」たちの「夢の国」と言っている場所が関係していて、てっきり清国かと思っていたのだが、そこの敵対する住民の様子ではちょっと違うようですね。 

秋暮の五人 くらまし屋稼業 (時代小説文庫)
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