サイコパスとASDのプロファイリングチームの捜査の凄さを実感せよ ー 佐藤青南「オイディプスの檻」

オイディプスの檻 犯罪心理分析班 (富士見L文庫)

警察の科学捜査にプロファイリングを本格導入するためのネックとなっていたサンプル不足を補うため、警視庁の女子高生失踪事件の捜査本部に特別参加することになった科捜研の研究員・土岐田秀一と、彼の専属とされた新米刑事の八木小春のコンビが、プロファイリングの捜査手法を使って、警察本体が持て余す難事件を解決していく「犯罪心理分析班」シリーズの第一弾が『佐藤青南「オイディプスの檻 犯罪心理分析班 八木小春」(富士見L文庫)』である。

本巻は、初陣とあって二巻以降、土岐田と八木が活動することになる警察プロファイリングチーム「C-Mas」が正式組織となる前の創設期の話である。

【あらすじと注目ポイント】

話はまず、高級住宅街で失踪した女子高生の捜査で、このシリーズの主人公コンビ・土岐田と八木が聞き込みにまわった類似の失踪事件の被害者・高田美穂の父親から包丁を持って追いかけられるところからスタート。なにせ、娘の無事を願う父親が「もう一度、娘と話をさせてくれ」というのに対し、「無理です。おそらく娘さんは、とうに死んでます」と藁にでもすがる気持ちをぶち壊すのだから、当たり前といえば当たり前の成り行きである。

このあたりをみてもわかるように、土岐田は人の感情とかが全く推し量れない性向の持ち主で、プロファイラーとしては一流だが人とのコミュニケーションはからっきしダメというASD。さらにプロファイリングを捜査に取り入れるといっても、現場は全くその気はなく、土岐田はお客様状態で情報の入れる気がない、というのであるから、彼のサポートのつけられた八木小春の苦労も並大抵ではない。そして、土岐田が一緒に捜査するメンバーとして組むのが、公安部の塚本拓海、ハッカーのエイジという二人なのだが、この二人が典型的なサイコパスという設定である。

なので、彼らの捜査方法も型破りで、現場はほとんど調査せず、被害者の顔立ちが似ているとか失踪時の状況とかのデータで類似事件を抽出し、そこから犯人像の推定とどこに住んでいるかの地理的推定をしていくといった手法で、これでは現場の捜査員からは支持されないのは無理もないですね。しかも、その推定にあたっては、様々なシステムへのハッキングや、公安や秘密の捜査データの流用や、勝手な家宅捜索もやる、といった際どいやり方なので、まっとうな警察官の小春ちゃんはもう「壊れ」そうになるのも納得です。

ただ、そんな「アブナイ」彼らのやり方が、今まで迷宮入りしていた前述の高田美穂失踪事件が、実は男女関係のもつれによる殺人事件であることをつきとめたりして、腕利きであることを証明しますね。

そして、このプロファイリングチームがあぶり出した、今回の女子高生失踪事件の犯人像は、 ・妄想型シリアルキラーで、不本意な形で関係を絶たれた女性と顔立ちの似ている女性を拉致して、その女性の人格を演じさせようとしている ・暴力的な手段を用いていないことから、他人を警戒させない容姿と物腰をしている ・几帳面な性格で、知能レベルも高い。 ・拉致した女性を監禁する家やマンションを所有している といったものをあぶり出すのだが、リストの上がった男たちは次々と「シロ」であることが証明されていく。本当の彼らのプロファイルは正しいのか・・・といった感じで展開していきます。 最後のほうで、さて犯人は、というところで、今風の大どんでん返しにあって、思わず唸ってしまうこと請け合いの仕上がりです。

【レビュアーから一言】

プロファイリングというのは随分以前に注目を浴びた捜査手法で、かなり手垢がついている感じがしていたのだが、ここにサイコパスとかの特徴的な精神性向の人々をキャストや登場人物に入れ込むことによって、複雑さを加えて「プラファイリングものミステリー」が現代風に蘇ってますね。さらには、この中に放り込まれて翻弄されつつも捜査をリードしていく「小春ちゃん」が健気な「良い味」出してます。

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