キングダムのその後、秦を滅ぼした劉邦、登場=高橋のぼる「劉邦ーRYUHO」1・2

現在からおよそ、2200年前の中国。500年以上続いた戦乱を、中国史上はじめて統一した秦国と他の六カ国の攻防を描いているのが、原泰久「キングダム」や王欣太「達人伝」のシリーズなのですが、その秦によって統一が果たされてからほぼ十年後、秦王政が名を改めた始皇帝の圧政により、民衆の不満は鬱積し、滅ぼされた六カ国の遺臣は復活を画策し、一方、秦王宮内では腐敗の臭いが高まっている、という秦朝末期を舞台に、田舎町の風来坊から、秦王朝滅亡後に200年間続いた「前漢王朝」の始祖となった「劉邦」の活躍を描いたのが『高橋のぼる「劉邦ーRYUHO」』のシリーズです。

その将来的には天下を取ることになるのですが、「稀代の英雄・豪傑」とは程遠く、女好きの劉邦が、「離陸」を始める「芽」が見えてくるのが第1巻と第2巻です。

あらすじと注目ポイント

第1巻 劉邦は、労役で行った咸陽で「炮烙の刑」であわや刑死 

第1巻の構成は

其之一 男気劉季
其之二 牢中窮鼠
其之三 無為極地
其之四 項燕伝説
其之五 逃亡重罪
其之六 唐突立志

となっていて、冒頭では咸陽の街を進む、始皇帝の盛大な行列を見て、「男ならああなりたいものだ」と羨ましがったというエピソードのところから始まります。後に劉邦と天下を争った項羽が「あいつにとって替わってやる」といったエピソードと対照的に語られるところですね。このとき、劉邦は、同じ沛県の役人・蕭何が連れて行った首都の労役に服す村人の一人として上京していて、ここで、労役現場の飯炊きをしてる「曹ちゃん」に惚れてしまい、という筋立てです。

この「曹ちゃん」こと「曹氏」は漢王朝の簒奪を狙った呂氏一族を倒したクーデターを起こした劉肥を産んだ女性なのですが、身分は低く出身地や生年は伝わっていません。

しかし、この咸陽で、象のうんこを浴びてしまった蕭何の体を洗うため、宮殿の緯度の水を使った咎で、劉邦は燃え盛る炎の上に油を塗ってつるつるにした銅の柱を置いて、焼けた柱の上を裸足を歩かせる「炮烙の刑」に処せられてしまうことになってしまいます。この処刑方法が考案されてから千年間、誰も渡り切った者はいない、という処刑方法なのですが、果たして劉邦はどうやってこれをクリアするのか・・というところは原書のほうで。

様々な幸運な巡り合わせ、炮烙の刑をクリアした劉邦は労役の任を解かれ、故郷・沛県に帰参するのですが、その途中で、始皇帝が中国全土を視察する巡行に出会ってしまい、沛からきた仲間を殺されてしまい、秦王朝への叛意が芽生えていきます。

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第2巻 劉邦は、王陵の仕掛ける暗殺の企みをかわし、秦の役人となる

第2巻の構成は

其之七 劉邦帰郷
其之八 粛少狼狽
其之九 一食即発
其之十 蟲毒呑魂
其之十一 四面刺客
其之十二 劉邦成蹊
其之十三 男夏候嬰
其之十四 満身創痍

となっていて、咸陽での労役から帰郷した劉邦は、再びプータロー生活を送っているのですが、この沛の町の任侠のボス・王陵から、闘犬祭りに出場する「犬」を20頭集めるよう命令されます。

王陵の第一の子分の「雍歯」の持ち犬が勝てる咬ませ犬を集めろということで、沛の町一番の顔役の命令とあってそれに従わないわけにはいかないのですが、幼馴染の周勃の妹が、雍歯に乱暴されたことを知って、彼への復讐と慰謝料を分捕ることを画策し始めます。

その方法というのが、集めろといわれた「咬ませ犬」と闘犬博打を使ったやり方で・・という展開です。

うまく出し抜いたと思われたこのやり口だったのですが、持ち犬を殺されたと思い込んだ思い込んだ雍歯が劉邦に挑みかかり、あわや仲間を含めた大乱闘に発展しそうになるのですが、ここで地元の大ボス「王陵」が仲立ちに入り、雍歯と劉邦との一騎打ちで勝負を決めることになります。

しかし、彼が一騎打ちの方法で選んだ6杯の酒杯のうちの一つの蟲毒を入れ、二人で交互に飲み合うというロシアンルーレット的な勝負には、劉邦を毒死させようとする仕掛けが施されていて、という展開です。

ちなみに「蠱毒」というのは原書内でも簡単な解説がされているのですが、犬を使った「犬神」や猫を使った「猫鬼」と並んで、古代中国を代表する呪術で、蛇、ムカデ、ゲジゲジ、蛙といったものを同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、最後に勝ち残ったものを神霊として祀った後に殺してとった毒を使って呪術を行うもので、日本でも、称徳天皇を呪詛したとして不破内親王が、光仁天皇を呪詛したとして井上内親王が、罪に問われ糾弾されています。古代では呪詛の鉄板系であったようですね。

巻の後半では、王陵が劉邦の命を狙っていることを知った蕭何の配慮で、劉邦は「亭長」へと任じられます。当時、一定距離ごとに置かれていた公設宿舎の管理者兼お巡りさんという小役ですが、秦の役人となれば、これを暗殺することは、厳しい秦法では国家反逆となるため、王陵がうかつに手出しできなくなると踏んでの措置ですね。

しかし、亭長となったことで、幼馴染の夏侯嬰を無実の罪に落とすことになってしまうのですが、その詳細は原署で。

Bitly

レビュアーの一言

今巻では、沛県で下っ端働きをしている劉邦は、この地域の任侠のボス・王陵やその子分の雍歯に媚びへつらって、言いつけられたことをこなしているのですが、劉邦がだんだんと自勢力を拡大し、秦に対抗する反乱軍の重要メンバーになっていっても、彼らを退けることはできず、どちらも最終的には「列侯」に封じて、前漢の」重要メンバーとして処遇しています。

特に、王陵は、劉邦が「馬鹿正直」と評したように、前漢王朝の実権を握った呂后に対し、劉邦の系統を守ろうと諫言し、それがもとで宰相の権限も剥奪されたぐらい、劉氏を守ろうとしているので、この巻の段階では劉邦を亡き者にしようと暗躍しているのですが、いつの間にか彼に取り込まれていたのだと思われます。

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