老人ホームの大量殺人犯を弁護する悪徳弁護士・御子柴の目的は?=中山七里「殺戮の狂詩曲」

少年期に幼女を誘拐して殺害し、その遺体をバラバラにしてばら撒き、世間から「死体配達人」と呼ばれる凶悪犯罪を犯し、少年医療刑務所へ入所。ここでの経験や恩師の教育をうけて、出所後に司法試験に合格し、弁護士となった「御子柴礼司」を主人公にした、異色のリーガルミステリーです。
彼は、高額な報酬と引きかえにどんな相手の弁護も引き受け、検察の求刑をあらゆる手を使ってくつがえしていく、悪評の高い弁護士なのですが、その弁護に陰にある隠れた真実と彼が弁護を引き受ける意外な理由を描く「御子柴礼弁護士」シリーズの第6弾が『中山七里「殺戮の狂詩曲」(講談社)』です。

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あらすじと注目ポイント

構成は

一 非道の被疑者
二 邪悪の弁護人
三 悲嘆の遺族
四 それぞれの十字架
エピローグ

となっていて、冒頭では、今回、御子柴が後に弁護することとなる被告人・忍野忠泰の犯行シーンから始まります。

彼は介護付き有料老人ホームの介護士をしていて、利用者からも職場からも評判のよい青年だったのですが、ある夜、勤務先のホームへ忍び込み、夜勤をしている同僚三人を拘束した上、入所者を次々と柳葉包丁で惨殺していきます。

忍野は、男女合わせて9人の老人を次々と殺していったのですが、警察の取り調べに対し、個人的な恨みや勤務先への不満から殺人を犯したわけではなく、本来は9人だけでなく、39人の入所者全員を殺すつもりだった、と供述を始めます。そして、殺害の理由が、このホームの入所者はすべて「富裕層」の「上級国民」で”社会のため”に大量殺人を行ったのだ、と主張し、という筋立てです。

反省や悔恨の欠片もない犯人・忍野の態度で、裁判となれば「極刑間違いなし」と言われているのですが、この勝ち目のない裁判の刑事弁護人に名乗り出たのが本シリーズの主人公「御子柴礼司」です。
 
被告の忍野とは縁も縁もなく、弁護料は忍野に財産もなく国選弁護なのでさほど期待できません。さらにこの凶悪事件の弁護人に自ら手を挙げたことで、御子柴の過去の犯罪が掘り起こされることも想定され、御子柴の数少ない理解者の弁護士界の大物・谷崎や広域暴力団の宏龍会の顔役・山﨑、事務所の事務員・日下部洋子が辞退するよう勧めるのですか、御子柴は「悪名は無名に優る」と宣伝効果が抜群だということをききません。

そして、御子柴は被告・忍野と接見するのですが、彼は上級国民の老人は社会や家族のためにも到達すべきだ、と歪んだ優生思想を声高に主張します。
このままでは裁判で負けてしまうことは確実なため、御子柴は遺族のもとを聞き込みに行くのですか、減刑嘆願書がもらえないか聞き込みを開始します。しかし、大ファッションメーカーのカリスマ経営者の娘や、元厚生労働省の高級官僚をはじめ、個人事業主の母親、いじめで精神を病んでしまい引きこもりになった男性など様々な環境の遺族の聞き込みをするのですが、忍野の減刑を願う遺族は一人としていません。

この様子を聞いて自分が殺害した老人の遺族も、被害者たちが早く死ぬことを望んでいたと確信していた被告・忍野はショックを受けるのですが、御子柴は、彼の「優生思想」の根っこがネットで「先生」と呼ばれる人物による洗脳を受けていたらしい気配を見つけるのですが・・という展開です。

後半では、公判の参加人陳述で、遺族たちが被害者たちへの思いを語り、被告の優生思想がどんどんと崩れチェ行くところが読みどころです。このあたりは、御子柴が弁護を引き受けた理由と密接に関連してきますので、見逃さないようにしましょうね。

そして、御子柴は忍野の「無罪」を公判で主張するのですが、その理由がなんと「殺意の不在」というとんでもない理由です。柳刃包丁を何本も用意し、夜中に老人ホームに無断侵入し、老人を計画的に殺したいった彼に「殺意」がなかったとはどういうことか、今巻の大量殺人の驚くべき仕掛け人の正体が明らかになっていきます。

レビュアーの一言

今巻では本編のドンデン返しとは別に、「エピソード」のところで、御子柴が今回の事件の弁護を引き受けた理由が明らかになります。それは彼の医療刑務所入所時代に関わることなのですが、ここに気づいた人はこのシリーズのかなりのファンに間違いないと思いま
母親、刑務所時代の恩師、事務所の従業員など、身近な人に降りかかる災厄の弁護を引き受けてきた御子柴なのですが、次巻以降、誰の弁護を引き受けることになるのでしょうか。彼の回想にちょっっぴり登場する家族や友人、あるいは恩師といyったちょっとした「端役」の関係者が多いのですが・・。

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