炎上沈静人・西澤奈美の次のターゲットは「オレオレ詐欺犯」=神護かずみ「償いの流儀」

企業の炎上対策を請け負って、陰から沈静化させるトラブル対策のプロ・西澤奈美を主人公にした裏ビジネス・ミステリーの第2弾が本書『神護かずみ「償いの流儀」(講談社)』。

「西澤奈美」の登場作となる「「ノワールをまとう女」では、製薬企業の嫌韓トラブルを鎮めたものの、仕事の師匠と恋人・雪江を喪うこととなった彼女が、今回は失意の中でオレオレ詐欺集団との対決に飛び込んでいきます。

あらすじと注目ポイント

物語は、前作で奈美が恋人・雪江を青酸カリ自殺に見せかけた殺人で失ってから数月後から始まります。

恋人の死と師匠(ボス)を自らの計略で葬ったショックの整理がつかず、空虚な生活を送っていた奈美だったのですが、本拠とする新宿区大久保のビル近くで馴染みのタバコ屋を営んでいる高齢女性・上井久子がオレオレ詐欺にあい、虎の子の250万円を騙し取られてしまいます。

意気消沈して店を畳む話も出し始めた久子をなんとかして元気づけたいと考えている奈美なのですが、彼女の住んでいるビルの近くのビルへつながる小道で、コンビニの弁当を大量に買ってビル内へ消えていく男(奈美は「弁当男)」と読んでいるのですが)と出くわすことが多くなります。

ビルのオーナーに聞くと10人ぐらいの男性社員のベンチャーのようなのですが、日中社員は閉じこもっていて、会社名もネットには見当たらず。ということで、奈美は「オレオレ詐欺」の集団ではないかとあたりをつけて、盗聴を始めてしまうわけですね。

そして、彼らの犯行の様子を録音すると、警察ヘ匿名でタレ込み、とオレオレ詐欺グループを壊滅状態に追い込むのですが、これが今回の大トラブルの始まりです。

というのも、詐欺グループのほとんどは検挙されたのですが、そのうちの一人が逃げ延びたために、グループを操っていた者たちに奈美の情報が伝わり、波は彼らから監視され、命を狙われることとなってしまいます。

ちょうどそのころ、奈美の周辺には、亡き恋人の「雪江」の児童養護施設時代の後輩と名乗る「松井淳」となのる青年が接近してきます。松井は雪江にプロポーズしたこともあるらしく、彼女の想い出を求めて奈美に接近してきたようですね。

この後、奈美が詐偽の実行犯であった劇団関係者をあぶり出し、警察にタレ込んだことから、詐欺グループの奈美に対する攻撃が、駅のプラットホームから突き落とそうとされてことにはじまってより凶暴化してきます。

そして、彼女を拉致して殺害しようという計画を傍受した奈美は、逆に彼らのアジトに逆潜入しようと試み、松井をアシスタントとして使うのですが、どうしたことか奈美の計画は相手に筒抜けになっていて・・という展開です。

西澤奈美の登場作であった前作に比べ、後半ではバイオレンスなバトルシーンが展開されていくので、そこは覚悟しておいてくださいね。

レビュアーの一言

本作は前作「ノワールをまとう女」の第2弾という位置づけであるとともに、前作でボスである師匠や恋人を自分のせいで喪ってしまった「奈美」の贖罪篇という性格ももっています。

まあ、その「償い」として壊滅させられたオレオレ詐欺の犯罪集団は運が悪かったとしかいいようがないのですが、彼女のトラブル解決のやり方がネット世論を使うだけでなく、最新機器を使ったかなりの荒事も手管の中にあることがわかる一作です。

この巻で新しい出発をした「西澤奈美」がてがける次のトラブル処理がどんなものか第三作を期待したいところです。

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